底なし沼のマシュー

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 ***  確かに。  過去、僕の調査はかなり強引なものだったのかもしれない。  こことそっくりな遺跡が日本の某所で発見された時、既に二十代で大学教授となっていた僕は危険を顧みず発掘調査を強行してしまったのだから。  地盤が緩くなっていること、そして国の許可を得ていないことはわかっていた。それでも、あふれ出る衝動を抑えることができなかったのである。  発掘調査中、僕のチームが地下に潜っている途中で落盤事故が発生した。  僕と数名の助手は命からがら逃げだせたものの、発掘調査に加わった学生たちと、それからバイトで募った調査団のメンバーが複数生き埋めとなってしまったのである。最終的な死傷者数は十五人。僕は、過失致死の罪に問われて起訴されることとなってしまった。  通常の過失致死ならば罰金刑のみだが、僕の場合は業務上過失致死罪である。人が死ぬ可能性があるのをわかっていながら発掘調査を続けたとして、三年の実刑判決が下ったのだ。幸いにして執行猶予はついたものの、責任は重大として学会から追放される結果となってしまったのである。  納得がいくはずがなかった。  もちろん、人が死んでしまったことは悲劇だろう。しかし、国に成果を横取りされる瀬戸際で、どうしても調査を急がなければならなかったという事情がある。僕の夢を叶えるためには、なんとしてでも発掘調査を自分の手で成功させる必要があったのだ。  そう、僕の夢――それは。 「この外壁も、壊して売ればかなりの金になりそうだよな」  追憶に浸っていた僕は、男の言葉に我に返った。にやにやしながら遺跡の壁を触っているアルヴィン、僕は慌てて彼を止める。 「や、やめてくださいアルヴィンさん。この壁を壊したら、中まで崩れてしまうかもしれません。ここの真珠をはぎとるのは中の調査が終わってからにしてくれないと」 「はははは、わかってるって。地下にある財宝が埋まちまったら何の意味もねえからな。……俺のチームの奴らには声をかけてある。発掘調査開始は三日後でいいか?フリハタさんよ」 「ええ」  僕はにやりと笑って頷いた。 「もちろん、それで構いません」
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