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三日後。
僕は遺跡の前に設置した仮説テントの中で、仕事先と電話をしていた。
『なるほど、それでは調査を行ってくれる方の手配は既に?』
「ええ。順調です。何も心配いりません」
『それは良かった。結果、楽しみにしております』
「はい。また何かありましたら報告いたしますので」
ぷつ、と音を立てて切れるスマホ。
いよいよ、夢の第一歩に近づくことができる。先方も成果を心待ちにしてくれているのだ、失敗は許されない。本来ならば僕が直に入って中を確認したいところ、立場上それができないのが非常に残念である。
「おお、立派なテント作ったじゃねえか」
「おはようございます、アルヴィンさん」
テントの中を覗きこんできたのはアルヴィンだ。その後ろには、複数人の屈強な男達の姿が見える。彼の仲間は世界中にいると聞いていたが、どうやら本当らしい。色が真っ白な金髪碧眼の白人から、浅黒い肌をした無骨なインド人っぽい男性に、アジア系っぽい顔立ちの者までいるようだ。誰も彼も、鍛え上げられた肉体をしている。
今回の調査は、それこそ世界の歴史をも変えかねない重大なものとなる。彼等には財宝を好きに持ち帰っていいと言っているし、それとは別に莫大な報奨金も払うことになっていた。モチベーションが上がるのも当然なのだろう。
「お前の頼みだからな、選りすぐりの精鋭を連れてきたぜ」
にやりと笑うアルヴィン。
「カメラも数種類持ち込む。映像をリアルタイムでお前に流せばいいんだよな?それと、いろんな機材も設置する、と」
「ぜひ、お願いします」
僕は深々と頭を下げた。嬉しいのはこちらも同じ。うっかり表情が緩まないよう、自制するだけで大変だったのである。
「携帯と無線機、両方持っていくのをお忘れなく。ただ……我々がやっているのは、いわば盗掘行為のようなものですからね。国の公的機関への救援要請は、ギリギリまで行われません。ですのでどうか、安全には十分に配慮して先に進んでくださいませ」
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