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何を思えばいい。
「ヒャッハー!」
鉤爪を振り乱し襲いかかってくる男。しかし僕にはその動きがとても遅く感じる。
「『適者生存』っ!」
僕はこのハズレスキルを以てパーティから追放された。そして流れ着いたこの街で冒険者登録をしていたところ、この男に唆された。
奴隷商会ハブノッツ、その頭目。
安全と生活を保証してやると言われ、ついて行ったのが運の尽き。
奴隷堕ちした僕はボロ雑巾のように働かされ、報酬も全て奪われる日々。
だがそれも今日で終わりだ。
「視える!視えるぞ!」
僕の『適者生存』は適応した者が生存するものではなかった。
生存した者が適応するものだったのだ。
「ぐぁあっ!」
適応さえ済めば、強くなる。
「貴方に勝てたら僕達の奴隷契約、解除してくれるんですよね?」
「ヒィっ!」
強者に挑戦し、不様に生き残る覚悟こそ、僕には必要だったのだ。
「わ、わかった!わかりました!」
教えられたのだ。こんな下種に、僕は。
「……ちくしょう…」
もういい。
もういいよ、だ。僕が思うのは、それであるべきだ。
こうして、忌まわしきこの街を抜ける。
霧は晴れて、蒼天は輝く。陽の光を全身に浴びるのなどいつぶりだろう。
僕は堕ちるところまで堕ちて、後は昇るだけ。
この人生を謳歌してやる。
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