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女戦士が斧を振り、デス金糸雀を蹴散らす。
今日も死にかけている私。
『限界突破シマシタ』
朦朧とした頭の中に、声が響いた。
『レベル101。オメデトウゴザイマス』
突如として、万物を見通すような全能感が私を支配する。
ピロリン!ピロリン!ピロリロリン…
そう。
私は限界突破などしていなかったのだ。
レベル100は、蛹の時期であった。
この数百年、限界突破の存在が確認されていなかったため、誰も知らなかったのだ。
理を得る、失われた力が途端に漲る。
レベルの上昇に併せて知識、スキル、ステータスが復元し、そして発展していく。
素晴らしい。
この力ならば、自由だ。
奴隷契約を破棄する条件は、奴隷商に打ち勝つ事。しかしもはやそんな手間すら必要ない。
これは但し書きの恩恵だ、知識が流れ込む。
スキル『鑑定(めっちゃ)』ならば、奴隷紋など鑑定、解析した上で分解する事が出来る。それが理解出来た。
「めっちゃ鑑定ぃ!」
ほら、もう解けた。
「ふへっ、はひへはは…」
頬が緩む。私はかつての栄光を取り戻せるのだ。
どれ、ひとつ意趣返しといこうか。
「奴隷商ぅぅう、鑑定してやるぞぉぉお」
ハイになった私を悠然と眺めている奴隷商と女共。しかしその余裕も間もなく消える。
「めっちゃ鑑定…」
スキルの発動と共に、奴隷商の全てが私の頭に流れ込む。
「あはっ!あはっ!」
奴隷商レベル109(限界突破1)。
生意気に限界突破していやがるが所詮は奴隷商。ステータスは下の下。隷属させねば何も出来ないザコでグズである。解析してやろうか、分解してやろうか。
「あははっ!」
果たして所持していたユニークスキル。
『持たざる者』
コレだ。コレこそが、きっと王女をおかしくさせた何かだ。
さぁて、その内容は…
「ふはは…」
『奴隷から魔物として扱われる』
「……は?」
『奴隷から魔物として扱われる』
「はぁ?」
愕然とする。
い、意味が分からない。まも、なに?
魔物として扱われて、何なのだ?
奴隷の敵になって、どうするのだ?
やはり鑑定スキルは壊れたままなのか。慌てて先程倒したデス金糸雀をめっちゃ鑑定する。
『デス金糸雀:レベル258(上限突破2)』
「はぁぁ!?」
あり得ない。なんで魔物が限界突破している?そもそもレベル10を超えるデス金糸雀など聞いたこともない。
「めっちゃ鑑定!」
『聖女レベル534(限界突破5)』
『聖騎士レベル847(限界突破8)』
「……へぁ?」
愕然は呆然へと変わり、思わずへたり込む。
勝てる。奴隷商に勝てる。
女共はホンの指先ひとつで奴隷商を、打倒どころか消し炭にできる。
何故?何故?何故?
訳が分からない。意味が解らない。
「はぁ、はぁ…」
しししかしとっ、とにかく皇女を解放し、連れ帰ればやり直せるのだから。
「め……めっちゃ鑑定…」
皇女に刻まれた奴隷紋を鑑定解析、そして分解する。
スパアアアアァァ…
皇女は穏やかな光に包まれ、やがて奴隷紋はすっかり融けてしまった。
「お、うじょ……さま?」
奴隷から解放された皇女は私を見て、まるで女神様とみまごう程に穏やかな微笑をたたえる。
「……ずっと、ずっと貴方の様なスキルを持つ方を、待っていました…」
「皇女殿下ぁ」
私の呼びかけに、皇女はもう一度、にこりと笑い返して。
「おっっっやびいいいいいん!」
振り返り、奴隷商の元へと駆け出していった。
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