第13話 お腹の具合が悪くなって緊急入院した!―先輩が保証人は婚約者と記載してくれた!

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第13話 お腹の具合が悪くなって緊急入院した!―先輩が保証人は婚約者と記載してくれた!

今日は外勤で大岡山まで研究委託の打ち合わせに行ってきた。お昼に商店街を回っておいしそうな中華料理店をみつけた。そこで昼食に冷やし中華を食べた。とてもおいしい冷やし中華だった。 打合せが終わって会社へは4時ごろに帰って来た。それで帰宅中にお腹の調子が悪くなった。帰るとすぐトイレに行きたくなった。下痢をしていた。食欲もないので、そのまま休むことにした。 すぐにまたトイレへ行きたくなった。やはり下痢が治らない。トイレの中が少し赤くなっている。嫌な感じだ。お腹も痛くて不快感がある。 しばらく眠ったみたいだけど、お腹が痛くて目が覚めた。またトイレへ行きたくなった。下痢がとまらない。相変わらずお腹が痛い。11時だった。心配になって先輩に電話をかけた。 「夜分すみません。お腹が痛くて、下痢をして、トイレが赤くなっています。どうしたら良いのか分からなくて、心配で」 「それは大変だ。すぐに行くから、休んでいて」 先輩が来てくれる。そう思うと安心した。お腹が痛いけど眠れそうだ。 部屋の明かりが点いたみたいだった。 「沙知、大丈夫か?」 先輩の声が聞こえた。目を開けると先輩が私を心配そうにのぞき込んでいる。 「沙知、大丈夫?」 「うーん、痛い、お腹が痛い」 「大丈夫か?」 「おトイレに連れて行って下さい」 先輩は私を起こして抱きかかえてバスルームに連れて行って中へ入れてくれた。やはり下痢が止まっていない。トイレの中が薄赤い。 ドアを開けて出て行くと、心配そうに先輩が立っていて、今にも倒れそうな私を支えてくれる。 「血便が出ているみたい。トイレの中が赤くなっているから。それにお腹がとっても痛い」 「重症かもしれない。すぐに救急車を呼ぼう」 「お腹が痛い」 私をベッドに寝かせるとすぐに119番をして何か言っている。意識が朦朧としている。救急車のサイレンの音がする。 救急隊員の人が私を覗き込んで状態を聞いて確認した。そして私を担架で救急車に運んでくれた。寝台の横には先輩がいて手を握って励ましてくれている。 「沙知、しっかりして、大丈夫だから」 受け入れ先がきまったみたいで救急車が動き出した。救急車に乗るのは初めてだった。大丈夫かなと思ってうとうとしていると病院に着いた。 すぐにストレッチャーで診察室へ運ばれた。夜勤の医師が診察してくれた。そして採血、レントゲン撮影、心電図をとるように言われた。トイレでは血便を採取された。 再度の診察があった。すぐに入院して点滴を開始すると言う。看護師さんが3階の病室へ運んでくれた。まだお腹が痛いので心配だ。点滴を開始したら安心して眠くなった。 どのくらい眠ったのだろう。お腹の痛みは弱くなっているが、不快感は残っている。トイレに行きたいのでブザーで看護師さんに来てもらった。下痢は続いていて血便も出ている。 次に目が覚めたら、もう明るくなっていた。痛みは治まりつつあった。看護師さんが容態を見に来てくれた。体温を測って、お腹の具合を聞かれたのでありのままを答えた。 「婚約者の方が心配して何かあったら知らせてほしいと言ってロビーで徹夜されていました。夜明け前にお腹の痛みは治まりつつあって落ち着いて眠られていますと伝えてあります」 「婚約者というのは?」 「保証人の欄にそう書いてありましたよ」 「そうですか。会社に私が緊急入院したと連絡してくれるように伝えてもらえますか?」 「そうお伝えします」 それから今は面会謝絶となっていて、検査と診断の結果は午後には出るとのことだった。 午後1時になると先輩も病室へ呼ばれて、主治医から病状の説明があった。私の腕には点滴のチューブが繋がれていたが、その時はもう落ち着いていて、先輩に微笑む余裕があった。先輩も私の顔を見て安心したようで嬉しそうに微笑んでくれた。 診断の結果、病原性大腸菌O157の感染とのことだった。手当が早かったので重症化は免れたという。しばらく点滴して様子を見るが、下痢と血便が治まったら、食事を開始して一週間くらいで退院できるとのことだった。それを聞いて二人とも安心した。 先輩はすぐにその診断結果を研究開発部へ連絡してくれた。病室で二人になると私はニコニコして先輩に話しかけた。 「私との関係を婚約者と書いたそうですね」 「ごめん、入院の書類を提出しなければならなかったから、そうでも書かないと不審に思われるから、そうした。実際、赤の他人が真夜中に一緒にいるとおかしいだろう」 「看護婦さんから婚約者の方が一晩中ロビーで心配していましたよと聞きました。とても嬉しくて、ありがとうございました。それにアパートまで駆けつけてくれて、救急車を呼んで入院させてもらって、朝まであのままだったら手遅れになっていたかもしれません」 「『明日、私が生きている保証なんてありませんから』と言っていたのを思い出して気が気ではなかった。鍵を預かっていて本当によかった。すぐに部屋に入れたから」 「気が付いたら枕もとに居てくれて嬉しかった。私は一人でないと分かって」 「当たり前だ。沙知は一人なんかじゃあない。いつも僕がついている。ところで原因はなんなの? 心当たりはある?」 「外勤のお昼に食べた冷やし中華だと思います。そのあと、お腹の調子がおかしくなって、夕食は食べませんでしたから」 「災難だったね」 「これからは気をつけます。それから、一週間くらいは入院しなければならないので、とりあえず、歯磨き、カップ、ティッシュ、着替え、スリッパなどが必要ですが、入院の手引きに書いてあるそうです。パジャマとタオルはレンタルにします。ご都合の良い時に持って来てもらえませんか?」 「いいけど、着替えは下着だよね」 「はい、クローゼットの中のプラケースを見れば分かるので、何枚でもあるだけお願いします」 「いいのかい」 「恥ずかしいけど仕方ないです。あまり見ないで下さい。ほかに頼める人もいませんので。でもそれ以外のところは絶対に見ないで下さい」 「分かっている。一日休暇をとってあるので、これからすぐに行って持ってきてあげる」 「すみません。お願いします」 入院した総合病院は溝の口駅のすぐ近くだった。先輩はそれからアパートへ戻って、手引きに書いてあった必要なものを紙バッグに集めて持ってきてくれた。そして私へそれらを手渡すと早々に帰っていった。ありがとう、お世話になりました。 先輩はそれから毎日、退社してから病院へお見舞いに来てくれた。私も回復してきてメールのやり取りも可能になって二人の意思疎通はできるようになっていた。 先輩が私の緊急入院の対応をしたり、会社へ病状を連絡したり、お見舞いに来てくれていることは会社では知られていると思う。皆は私たち二人をもう先輩後輩だけの関係ではないと分かっていると思う。 私は入院してから一週間後に退院した。先輩は退院に付き添ってあげると言っていたが、重要な会議が入ってそれができなくなった。私は体力も十分に回復したのでタクシーで帰るから大丈夫と言っておいた。入院の時はパジャマで運ばれていたので、先輩は退院用に頼んでおいた衣服や靴を届けてくれた。 退院の日、先輩は仕事が終わってからアパートに様子を見に来てくれた。私はアパートで3日ほど療養したあと出社した。先輩、お世話になりました。
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