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第6話 看病に行って大掃除をして見つけたDVDを全部持ち帰ってきた!
今日は土曜日だから目覚ましをかけないで寝たけれど6時には目が覚めた。今日は11時に先輩のマンションへ行くことになっている。予定どおりうまく行っている。今日もまた来ると言って帰ったけど、先輩は来ないでも良いとは言わなかった。
溝の口のスーパーによって、お昼と晩ごはんの材料を仕入れて行こう。材料の無駄がないように昼は親子丼、晩は焼き鳥丼にしよう。お味噌汁は昼と晩は同じで良いと思う。卵は昨日買ったのがある。電気釜とお米はあった。
◆ ◆ ◆
マンションのドアチャイムを鳴らす。玄関ドアが開くまでに少し時間がかかった。きっとまだ寝ていたのだと思う。少しは良くなったのかしら? でも私をじっと見ていた。
今日の私は土曜日の可愛いスタイルにしている。先輩が喜ぶことが分かっている。マスクをしているが、メガネはかけていない。白いブラウスに薄茶色のベスト、動きやすいように同じ薄茶色のスラックスを履いている。手にはレジ袋をぶら下げている。昨日と同じですぐに靴を脱いで上がって行く。
「おはようございます。調子どうですか?」
「頭痛はなくなった。朝、体温を測ったら平熱だった」
「油断しないで寝ていて下さい。父も油断していました。簡単なお昼ごはんを作ります。ごはんを炊きますので少し時間がかかります。できたら声をかけます」
そういうと、私はキッチンへ行った。先輩は寝室に戻って横になった。昨日キッチンの状況を調べておいたから、調理しやすい。結婚したらこんな感じかな? そうなるといいな。ふと思って一人で笑った。
ご飯を炊くのに時間がかかった。炊きあがったらすぐに盛り付けた。お味噌汁もできている。私もお腹が空いた。
「お昼ご飯ができました。胃に負担のかからないように親子丼とお味噌汁です。私も食べます」
私の声で目が覚めたみたいだ。やはり眠っていた。平熱と言っていたけど大丈夫かな。時計をみると12時30分だった。テレビをつけた。
座卓の上のどんぶりとご飯茶碗にそれぞれ親子丼、おわんとカップにそれぞれお味噌汁が入っている。先輩が寝室から出てきて座卓の上を見ている。
「食器が一組しかないのですね。なんとか二人分を盛り付けましたが」
「仕方ないだろう。独り身だから一組で十分だ」
「女っけがないのは良いとしても、男性って夢がないのですね」
「夢って、女子は二組持っているのか?」
「私は二組もっています。友人を招いたときに必要ですから。それに」
「それに」
「彼氏ができたら必要になると思いますので、まあ、夢ですが」
「夢ね、早く現実になるといいね」
先輩がなってくれれば手っ取り早いのに、他人ごとみたいに言う。
「あまり期待していません。冷めないうちに食べましょう」
先輩が食べ始めた。お腹が空いているとみえて、黙々と食べている。私も黙ってご飯茶碗に盛り付けた小盛りの親子丼とカップに入れたお味噌汁の味を確かめながら食べている。
親子丼は鶏肉と卵がほどよい柔らかさになっていて出汁も効いていておいしくできている。お味噌汁も具をたくさん入れてボリューム感があるように作った。味もまずまずかな。
「すごくおいしい」
「よかった。近くに親子丼のおいしい食堂があるので、それをまねて作りました」
「料理が上手だね」
「まねをしているだけです。それから、夕食に焼き鳥丼のたねを鍋に作っておきましたので、どんぶりにご飯を入れてそれを載せてチンしてください。お味噌汁もあります」
「焼き鳥丼定食だね、楽しみだな、ありがとう」
食べ終わったら、すぐに私は後片づけをする。これからまだやることがある。先輩はソファーに座ってそれを見ている。片付けが終わると先輩のところへ行った。
「着替えをしてください。汚れた下着は健康によくありません。洗濯と掃除をします。空気を入れ替えますので、窓を開けます」
先輩もそう思ったのか、寝室へいって着替えをした。上下のジャージと下着を別のものに取り換えた。私はたまっていた汚れものと一緒に洗濯機に入れた。全自動だから乾燥までしてくれるので、このままで良い。
「掃除機はありますか?」
「クローゼットにハンディ掃除器があるし、クイックルもあるけど」
「拝借します。ベッドで横になっていてください。すぐに終わります」
まず、バスルームへ入って掃除をした。掃除はしているようでそんなに汚れてはいなかった。綺麗好きは本当みたいだ。先輩はベッドに座っている。バスルームの掃除が終わったので、今度はベランダのガラス戸を開けて、部屋を掃除機で綺麗にする。
床や敷物の掃除が終わると今度は座卓やパソコン机、本棚の上を拭いて回る。大掃除のつもりで隅々まで綺麗にしたい。
テレビの台も拭く。台の下の棚にほこりがたまっていると思って、中味を取り出した。何枚もDVDが入っていた。その時に先輩があわててこっちへ飛んできた。
「そこはだめだ」
そのDVDは20枚ほどあった。ちっとカバーを見ただけでそれが何だか分かった。全部アダルトビデオだった。
「キャーいやだ」
ちょっと見ただけでもこっちが恥ずかしくなるようなものばかりだった。
「見られてしまったか。しょうがないだろう。これでも健康なおじさんだから、見たい時もあるさ」
先輩は開き直って言い訳をしている。へへッ、先輩の弱みを握ってしまった。私はそれで気持ちのゆとりができて棚の中をゆっくり拭いて、DVDをまた元のところへしまった。
「カバーを見ただけですが、内容がすごそうですね」
「見たことあるの?」
「おしゃれを教えてくれた友人のアパートへ行ったときに、見せてもらったことがあります」
「どうだった」
「恥ずかしくてよく見ていませんでした。それに肝心なところがぼやけていたし」
「よく見ていたんじゃないか。それなら貸してあげようか?」
一瞬、私はそれを聞いて驚いて先輩の顔を見た。先輩はまずいことを言ってしまったと後悔しているように見えた。これは完全な『セクハラ』だと思う。困った表情が見て取れる。でもここで先輩を困らせてはいけない。とっさに思いついた。
「貸して下さい。勉強のために」
「ええっ」
「恋愛の勉強のために見ておきたいと思いますので、貸してください」
「いいけど、どれがいい」
「どれがいいといっても、お勧めはありますか?」
「お勧めといっても好みというか、趣味があるからなあ、選ぶのは難しい」
「それなら、全部貸して下さい」
「ええっ全部?」
「全部貸して下さい。お願いします」
「そうまでいうなら全部貸そう。いろいろなタイプがあるから参考になると思う」
先輩は観念したようにそういった。私から『セクハラ』だと言われて嫌われなくて良かったと思っているのだろう。
「ありがとうございます。勉強になります」
「それじゃあ、10枚ずつ束にして紙で包んで紙の手提げバッグに入れて帰ったら良いと思う。人に見られるとまずいから」
「そうします」
私は包装紙で丁寧に包んで紙の手提げバッグに入れて帰り支度を始めた。
「DVDプレーヤーはあるの?」
「映画のDVDを借りて見ているのであります」
「これで帰ります。明日の朝、10時ごろに電話します。まだ、熱があるようだと、またお昼ご飯を作りにきます。良くなっていれば遠慮します」
「ありがとう。気を付けて帰って、インフルエンザがうっていなければいいのだけど」
「大丈夫だと思います」
私は帰ってきた。少し疲れた。先輩とはいえ独身男性の部屋に一人で行っていたのだから、やはり緊張していたのだと思う。2日間、看病に行ったけど、受け入れてもらえた。心地よい疲労と満足感で今夜はぐっすり眠れそうだ。
翌朝、10時に私は先輩に電話を入れた。体温が下がったから大丈夫だと言われたので、今日は行かないことにした。今日は借りてきたDVDでも見てゆっくりしよう。
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