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「お腹が空いたの……」
女は檻の中で弱々しく啜り泣いた。
「どうしてこんな酷いことをするのよ……」
女はもう三日間、何も口にしていない。食べ物はおろか水を飲むことさえ許されていなかった。
中型犬用の檻は狭くてまともに動けない。膝を抱えて長時間座っているため、身体の節々が悲鳴を上げている。固いコンクリートの床が骨ばった尻に激痛をもたらしていた。
部屋に光は一切無かった。暗闇の中、女の泣き声だけが虚しく響いた。
朦朧とする女の脳裏に楽しかった頃の日々が浮かんだ。
優しい夫、可愛い娘。決して裕福ではなかったが家族三人で笑顔の絶えない幸せな家庭を築いていた。
「ママー、絵本読んでー」
娘を寝かしつける光景を思い浮かべている時、そんな声が聴こえた。そんなはずはなかった。分かってる。これは幻聴だ。娘はもうこの世にいないのだから――。
ある日の朝、夫の拓郎が豹変した。
寝ていた女は髪を引っ張り起こされた。突然のことに女は悲鳴を上げた。眠気は瞬時に吹き飛んだ。瞼を開けると眼前に拓郎の顔が飛び込んだ。
「キサマ……キサマというやつは……」
目が血走っていた。怒りで歯をぎりぎりと噛み締めている。女が恐ろしくて身じろぎをとれないでいると、強引にベッドから床に放り投げられた。髪の毛の束がぶちぶちと千切れて舞った。痛みよりも目に映る光景に衝撃を受けた。
血みどろのベッドの上に、娘の形をした肉塊が転がっていた。拓郎の手には赤く濡れたナタが握られていた。
「その娘に何をしたのっ」
女は拓郎を押し退けてベッドに駆け上がった。娘は四肢を根本から切断されて事切れていた。バラバラになった腕や脚の肉が所々削げ落ちていた。
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