第5話【鬼頭の思惑】

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第5話【鬼頭の思惑】

私(わたくし)は鬼頭(きとう)。 ユスティールの副社長だ。だがそのうちすぐに、私がこのホールディングスを支配する。 現社長は病気で余命がそう長くないため、娘であるユメカを結婚させて社長の座を退こうとしている。 その次に社長となるのは私で間違いない!だが一つだけ問題があった。 肝心のユメカが結婚を渋っているのだ。 どうやら今は亡き母親との約束を叶えるため、自らが社長になろうとしているらしい。 だから私は、彼女が大切にしていたブローチを盗んだ。母親はもうこの世にいないんだと分からせ、忘れさせようとした。 だがそれが思いもよらず逆効果となった。カイなんていう薄汚い少年に出会ってから、ユメカは毎日楽しそうだ。企画部のフロアに出入りしているところなんかも目にしたりする。 きっと何も知らない部外者のアイツが、頑張れば社長になれるよ!なんてユメカに吹き込んでいるに違いない。 アイツを排除せねば!! -------- 休憩室の居心地が悪いとユメカが話していたため、ある日のお昼休憩を広場でカイと2人で過ごすことになった。 「ここのガパオライス気になっていたの♪」 広場で人気のキッチンカーの列に並ぶ。 ようやく前方が見えてきて、2人はメニュー表を確認した。 『高いね、おれはやっぱなんかコンビニで買ってくるかな..』 「えーもう。私が払うから同じの食べよう?」 肥えてしまった舌だけど、もしかしてカイと2人で食べたらとっても美味しいんじゃないかなんて淡く浮かんだ期待を、ユメカは確かめたかった。 『ユメカに払ってもらうなんておれの中の漢(おとこ)が許さない』 「何それ、考え方古いよ?笑」 こういう風に笑っていると、普通の女の子になれた気分になる。カイは、ただの相原夢叶として接してくれるたった1人の人だった。 その居心地が好きだった。
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