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いなくなれ
机の奧に丸まったノートを取り出して、書き殴っていく。右手の指が黒くなっても、ビリッとノートに穴が空いても、私は夢中になって文字を書き続ける。
【いなくなれ!!いなくなれ!!いなくなれ!!いなくなれ!!】
誰かなんて書いたら先生にバレるから、誰を指し示しているのかは、私の頭の脳裏に浮かんでいるから大丈夫。
「ねぇ、誰のこと?」
夢中になっていたから、近づいてくるクラスメートに気づけなかった。私に話しかけるクラスメートなんて久しぶり。
「さあね」
私を心配してくれているクラスメートに酷い態度をとって、またボールペンを動かしていく。
「昔ね、誰かを書くと消えるノートの漫画があったんだって」
名前は聞いたことがある。本当なのかと一度だけ名前を書いたことがある。けれど、あの人は消えることなどなかった。
「警察に助けてもらって、平和な日常が戻ったけど大変だよ」
無視しても話しかけるクラスメートは私の右手首を見て小声で囁く。
「ヤケドの痕?」
私の右手首に、背中にも複数あるタバコの痕。気づいてるのに何も動かない先生も校長もみんな見てみぬフリなのに・・・・
「きみもなの?」
私一人が大変なんだと思ってた。けど、身近に同じ思いをしているクラスメートがいる。一瞬だけど、嬉しくなったんだ。
コクンと頷くとえくぼを浮かべて、冷めた笑顔を浮かべてさ。
「私たちでいつか消してしまおう?それまで耐えるんだよ」
そうして小指を差し出してきたから私は小指を絡ませて同じように冷めた笑顔を浮かべた。
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