3話 気になる幼馴染

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 学校が終わって帰る時間になると、私は学校の隣にある学童保育で過ごすことがある。低学年の時にはお母さんが迎えに来るまで宿題をしたり他の子と遊んだりしていた場所で、今でもたまにお世話になっている。色んな歳の子どもがいて、高学年の子が低学年の子を面倒を見ているこの空間は、一人っ子の私が疑似大家族を楽しむ場所でもある。  でも最近はアパートの大家さんの家にお邪魔してお母さんの帰りを待つことも増えた。大家のおじいちゃんおばあちゃんはすごく優しい人たちで、私もお母さんもいつも助けてもらっている。しかもここにはすごく可愛い黒猫がいて、この子目当てで遊びに行くこともある。  今日も学校帰りに大家さん家に行って、猫と遊んだりおばあちゃんとおしゃべりしていた。そして外が暗くなり始めたころお母さんが迎えに来たので、私たちは一緒にアパートの部屋へと帰ることにした。黒猫のノエルが玄関に来るまで私の足元にすりすりしてきて後ろ髪を引かれたけど、またいつでも会えるもんね。 「今日はコロッケを買ってきたからね」  素早く着替えてエプロンを付けたお母さんは台所に立って夕飯の準備を始めた。私も隣りに並んでトマトやキュウリを洗ってお手伝い。最近じゃ子ども用の包丁を卒業して大人用も使えるけど、お母さんと一緒じゃないとダメだって言われてる。 コロッケをレンチンしてテーブルに並べると今日の夕飯は完成。一緒に食べながら今日のことをお母さんと話すのが私たちのお決まりになっていた。私は幼馴染の男の子について話しだした。 「今日もね、大智くんと目が合ったの」 「そうなの?」 「うん。廊下で見かけたときにね。ちょっと遠かったんだけど、まただよ」 上を向いて今日のことを思い出しながら話していく。 「向こうもこっちを見てるくせに、目が合うとすぐに顔を逸らすんだよ。ひどくない?」 「大智くんも恥ずかしいだけなんじゃない?」 「そうかなあ」 「そうよ。澪ともまた遊べる時がくるわよ」 ニコニコしながら私の話を聞いて答えるお母さんだったけど、次の私の言葉に声を上げて笑った。 「でも私は遊ばなくていいよ。学校じゃ視界に入ってきちゃうだけだもん」 第3話 完
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加