~ 第一章 ~

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専務と訪れたランチのお店は、先月オープンしたばかりで、月替わりの多彩なアラカルトメニューとデザートの美味しさでとても人気があった。 メインの客層は女性かと思いきや、お肉のメニューも充実していて男性同士で来ても全く違和感がない。 広めの店内はスペースごとに少しインテリアが変わっていて、それぞれの客層が雰囲気に合ったスペースに案内されている。 「どう? 宮田さんの感想は?」 私たちは、お店の奥の方にある一段高いテーブルから店内を見渡していた。 「駅から少し離れているのは、これだけのスペースを確保するためなんですね。でもここならメニューも豊富だし、雰囲気もとっても素敵なのでお料理をいただくのが楽しみです。ディナータイムも来てみたいと思います」 「それは・・ひとりで?」 「えっ」 「誰かと一緒じゃないと、よからぬ男に連れていかれそうだなって。まぁ、もしかしたらすごくお酒が強くて動じないのかもしれないし、例えば空手の有段者で、変なヤツが来ても投げ飛ばせるのかもしれないけどね」 クスクスと笑う専務に、どう切り返すか頭を働かせた。 揶揄われているのだし、ムキになって反論するのは子どもっぽい。 「ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫です。エスコートしてくれる素敵な男性と一緒に来ますから」 そう言うと、専務は私から少しだけ視線を外した。 しまった・・受け答えがイマイチだったか。 微妙な空気になりかけたところで、タイミング良く前菜とスープ、パンが運ばれてきた。 盛り付けや温かさが、とても食欲をそそる。 「食べようか。半分仕事だと思って、良く味わって」 「と、仰いますと・・」 「うん、僕の今後の仕事に関係があるんだ。とはいえ、率直な感想が聞きたいから『半分仕事』ね」 食べ始めた専務の横顔は、いつもと変わらなかった。 少なくとも、さっきの私の答えで機嫌を損ねたわけではなさそうだ。 良かった・・。 ホッとしながら、私も目の前の料理を食べ進めた。
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