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秘密
「私、今年でこの世界を卒業するの。だから卒業前にたくさん来てくれたら嬉しいなあって」
「えっ!」
七吉はその話を聞いた瞬間、ガツンと記憶が飛ぶほどの衝撃を受けました。
「そんなあ。聞いてないよー」
「都に帰らないといけないの。そのうち迎えの者がやって来るわ」
「迎え? ナナちゃんは良いところのお嬢様なんだね。誰が迎えに来るんだい?」
「おじいさん」
「ナナちゃんのおじいさんってこと?」
「私の祖父じゃないの。この人よ」
そう言うと、ナナはスマホの写真を見せてくれました。写真の人物は口と顎に白いひげを生やし、サングラスをかけています。そして、右の手のひらを挙げて微笑んでいます。
「へっ?」
なんと、そこに写っていたのは、七吉が割ったあの竹の中にいたおじいさんの姿でした。
「ちょっと聞いても良い?」
「何?」
「ナナちゃんって地球人なのかなって…」
「実は私、月から来たの」
「月…」
「そうよ。今度、月からの使者が迎えに来るの。誰も運命には逆らえないわ。月に帰るしかないのよ。使者はもう地球に来ているみたいだし。まあ、地球観光してから私を迎えに来るみたいだけどね。それでも私に残された時間は少ないわ」
「か、観光…。そうなんだ。じゃあ、その使者がナナちゃんのところに来なかったらどうなるのかな?」
「どうにもならないわ。私だけでは月に戻れない。だから、使者が来なかったら今のままよ」
ナナの返答を聞いて七吉は安堵しました。
「ナナちゃんは月に帰りたい?」
「私は帰りたくない」
「そうか。だったら安心してくれ。俺が月の使者からナナちゃんを守ってみせる!」
「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくわね」
このとき七吉は心に決めました。なんとしても竹の中の人物を封じ込めて消し去らねばと…。
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