あるところに

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あるところに

ごく最近、あるところに『タケノコ採りの翁』というおじいさんがいました。おじいさんは家の裏山に生えているタケノコを取って暮らしています。春になるとタケノコ採りでガッポガッポとお金が入ってきます。タケノコ採りの他にタケノコ料理も提供してなかなかの人気です。 おじいさんは商売に対する嗅覚が鋭く、ジビエ料理の店も始めました。築100年以上の茅葺(からぶ)き屋根の家をリノベーションした雰囲気のある店です。囲炉裏で焼かれる料理は絶品。遠方から訪れる人も多く、とても賑わっています。 さらに隣の家が空き家になったので、古民家カフェにも手を出しました。畑で取れた苺、ブルーベリー、栗を使った季節限定のケーキ、そして庭で放し飼いにしている鶏の卵を使った特製プリンといったスイーツがたくさん売れています。 おじいさんの商売の生態系は収益抜群です。タケノコ採り体験の後、お土産にタケノコを買い、ジビエ料理を食べてから古民家カフェでデザートと共にまったりする観光客が後を絶ちません。おじいさんの(ふところ)はウハウハな状態です。 でも、おじいさんはそんなにお金を稼いでどうするのでしょうか。第三者からは羽振りの良い生活をしているようには見えません。近所の人達は不思議がっていました。
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