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「馬鹿々しい! これでどうやって戦うんだよ」
恨めしそうに天井を見上げ、勇者が文句をつけるが。
《そもそも正義を行う側が暴力を振るうこと自体が戴けません》
ポリスは素っ気なかった。
「まてまて、そんなことを言ったら某『幼児向けの食品擬人化アニメ』はどうなるんだ?! 最後は必ず超絶威力のパンチ一発で決めてるじゃないか!」
《あ、あれは、単に『敵を吹き飛ばしているだけ』で◯している訳ではないので》
「やかましいわ! 悪役メカ、めっちゃ壊れとるだろーが! やめやめ! もう、帰る」
勇者が怒りながら剣を鞘に収めると、魔王はそれを見届けて、そそくさと引き上げてしまった。いつの間にやら犬(ケルベロス)も消えている。
「やったー! もう終わりだね」
◯武闘家が勇者に抱きつこうとすると。
《はい、そこまで! R指定のない作品で男女のいちゃつきはハグか、描写でボカした軽いキスまでです》
「そこまでうるさいのかよ!」
《リア充は作品でも非リア充たちから嫌われるのです》
「あのー」
ヒーラーが怖々手を挙げる。
「実は僕と魔法使いさんは男同士で愛しあっているのですが、その場合は……」
《それは、まぁっっっったく問題ありません! よほどのキワドい描写がない限り、セーフです! むしろ追記されるべきシーンです、そこは!》
何故かポリスは異様に食いついた。
《ああ、それから◯武闘家さん》
ポリスが思い出したように言う。
《あなた、肌の露出が多すぎです。格闘家なのに肩や脚で素肌が見えるのは性的でよくありません》
「いや、これはほら、あたしがドラゴンの血筋で……」
《それと敵幹部さん、あなたもです。そのドレスは胸元と背中が開きすぎです。コートを羽織るなりして適切に願います》
「あーはいはい」
帰り支度をしている◯幹部はもうどうでもいいようだった。
《それとついでに魔法使いさんとヒーラーさん!》
「え? 僕ら、がっちり法衣で固めてますけど?!」
魔法使いが驚くが。
《それがよくありません。BL担当であれば個人的にはそうですねぇ……うなじと、それから鎖骨が胸元からチラリと見えているくらいが萌えます》
「いやもう、それ個人的な趣味でしょう! やってられないよ、もう帰ろう」
魔法使いはヒーラーとともに踵を返した。
《え? あ……BLさん、帰ったのか。なぁんだ、じゃ次へ行こ》
満足したのか飽きたのか、どうやらポリスも姿を消したらしい。
そして最後に賢者は篝火の灯りを消し。
「認めたくないものだのぉ。よく知っているが故の過ちというものを」
と、とある作品の名セリフを『リスペクト』して暗闇の中をゆっくり去っていった。
壮絶な決戦の場だったはずの洞窟には誰もいなくなり。
……筆者は思った。
『何これ? あれだけ伏線を引っ張りまくって盛り上げてきて、ラストこれで終わり?』
このグダグダではもはや公開できるレベルではない。
……作品ごと消すか。すんげーやる気なくなったし。
そして。
人知れず、いつの間にやらWeb上から作品がひとつつずつ、ひとつずつ、ひっそりと姿を消していき……。
寂静
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