食われる前に食え

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食われる前に食え

世界中で動く死体が徘徊するようになると多くの人々は当然のように自宅に引き篭もった。避難所も設置されたが、人が集まれば、逆に狙われやすくなり、自宅の方が安全で落ち着くとして、戸締りを強化して自宅に隠れる人々が多かった。そして、ネットでは、人体のさばき方という動画の再生数が、伸びていた。家にただ閉じこもっていても、食料はいる。そこで死体に食われる前に、こっちが食ってしまえというわけだ。 人肉を食うことに精神的な抵抗があっても、人間は飢餓状態が続けば、人肉を食う。それは、遭難や事故などで、食料が尽き、極限状態に追い詰められた人間が仲間の遺体を食って生き延びたという事例は実在する。だから、家に籠った人々は、外を徘徊する動く死体を、わざと家の中に誘い込んで捕まえて食料にして生き延びようとした。そうやって動く死体はどんどん数を減らし、死んだらすぐ火葬が法律的に徹底され、宗教的な理由で火葬じゃなかった地域にも火葬場が増え、そうして、動く死体の脅威は払拭された。
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