第6話 テスト

1/1
前へ
/39ページ
次へ

第6話 テスト

 テストまであと二週間となった。  出題範囲も発表されて、テスト勉強は大詰め。  だけど、全く捗らない……。  もうなるようにしかならない!  そう開き直りたくても、受験に響くと思うと、赤点だけはどうしても回避したい。  そんな時、ふーが土曜日に家でテスト勉強しようと提案してきた。  ふーの家は保育園の向かいなので、学校からは徒歩5分。  千秋も賛成で、勉強会を開催することとなった。 「テストだるいねー」 「でも、ふーはお茶の子さいさいでしょ? 頭いいもん」  頭のいい人、本当にうらやましい。 「でも、テスト前はさすがに勉強するよー」 「そうなのー? あ、英語教えてよー」 「いいよー」 「あ、うちもー。文法分かんなくてさー」  どうやら千秋も、英語は苦手らしい。  ふーは、アメリカに短期留学したこともあり、英語はペラペラなのだ。  そして、勉強会の日。  メリハリをつけるため、午前中はみっちり勉強し、午後は遊ぶことにした。  英語を中心に勉強したけど、ふーとのレベル差がすごすぎてびっくり。  何を聞いても、正確な発音でペラペラペラ~と答えてくれる。  教え方も丁寧で、なんだかすごくかしこくなった気分になった。  お昼過ぎに、休憩がてらに三人でグラウンドを歩いた。  すると、ふーが何かを思いついたように、小走りで桜並木に向かった。 「ねえ! この桜の木の下にタイムカプセル埋めない?」  そう言えば、タイムカプセルやりたいって言ってたなー。 「そうだねー。この桜の木、目立つから分かりやすいんじゃない?」  千秋は即座に賛成した。  中庭にそびえ立つ一本の桜の木。  樹齢百年以上とも言われる、ずっしりとした迫力ある、それでいて優しさも感じられる魅力的な木だ。  姫乃森中学校は創立七十周年目だから、それより前からここに立っていたんだなぁ。 「場所は決まったし、あとは中身か。どうする?」  私が聞くと、ふーが胸を張って答えた。 「五年後の自分への手紙と、写真を入れるのはどう?」 「そうきたか! となると写真なー。これから、いっぱい写真を撮っていこうよ」 「そうだねー」  会話は弾み、空が赤く染まってくる。  時間が経つのは早い。  そして、あっという間にテスト初日がやってくる……。  テストは三日間。  三人で頑張って勉強したんだ!  赤点だけは回避できるでしょ!  そう思って必死に取り組み、一週間後。  全教科の結果が返ってきた。 「ふー、すごっ! さすがだわー。うちは平均九十三ってとこかなー」  ふーの答案用紙を見た千秋が、驚きながら話していた。 「そう? 千秋も凄いじゃん!」  そういうふーは、最低でも九十六点であった。平均九十八点といってところだ。  さすが、かの有名な猫型ロボットを本気で作ろうと思っている人だ。 「なっつはー?」  千秋が私の机まで近寄ってきた。  素知らぬ顔で答案を隠す。 「ほうほう……うわっ……!」 「こら……見るなー!」  千秋とふーの連携プレーで、あっさりと答案を見られてしまう。 「うわっ! ギリッギリ!」  私のテストの結果は最低で四十一点。  かろうじて、赤点科目は無く、平均五十二点といったところだ。  二年生の頃までは、三十八点、酷いときは二十五点のときもあった。  三人で勉強会をしたおかげで、なんとか赤点は回避できたが、褒められる成績ではない。 「まぁー、テストも終わったし、羽根を伸ばそうよ! なんてたって、待ちに待った修学旅行だよ!」  テンション爆上がりのふー。  そうだ。  もうすぐ修学旅行。  三人だけの旅行。  楽しみで仕方がないのだろう。 「しっかり準備しないとね。三泊四日だよー。楽しみー」  千秋も楽しみのようだ。  私も楽しみだったけど、不安も大きい。  こんなド田舎から、大都会へ行くのだ。  迷子になっちゃうんじゃないか心配だった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加