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「あちぃ・・・・・・」
激しい情交の後、額に光る汗をぬぐいながら、モートは一気にカーテンを引いた。日が傾いてきたとはいえ、まだ十分に眩い光が差込み、思わず目を細める。次いで吹き込んできた爽やかな風が、火照った体に心地よかった。
煙草を吸おうと、床に散らばった服を拾い上げる。あと数本残っていたと思ったが、気付けばそれは最後の1本だった。
軽く舌打ちして、服を身に着ける。正直外に出るのはもう億劫だったが、煙草が無いほうがよっぽど辛い。銜えた煙草に火をつけて、僕は部屋を出て行こうとした。
「おい、ロアッ」
素っ裸なままのモートが叫んだ。間抜けなやつだ。だから僕は、お前といると疲れる。
「待てよ、どこに行くんだよ!?」
「煙草が切れた」
「ちょ・・・俺も行くから待っ・・・・・・」
一体こんな僕の何が気に入ったのだろう。慌てて呼び止めるモートの声を背に、僕は部屋の扉を閉めた。
海岸沿いの街道を歩きながら、僕は賑やかにはしゃいでいる人々の姿を見ていた。若いカップル、仲の良さそうな夫婦、家族連れ・・・・・・彼らの全てが、僕には遠いもののように思えた。波打ち際でおどけている子供たちも、あっという間に大人になり、やがては老いて死んでゆく。僕はそんな世界から目を背けるように、仮初の恋人を共にして流れて行くだけ・・・・・・。ずっと、そうやって生きてきた。
浜辺で、一人の少女が砂の城を作っていた。
背に流れる柔らかそうな淡灰色の髪が、ふと自分の幼い頃を思い起こさせた。
少女が何度城を作っても、完成が近づくたびに強い波が押し寄せて全てを崩し去ってゆく。
僕はしばらく、その少女の様子を眺めていた。
彼女の行為は何の意味もない作業のように思えたが、少女は城を築く間も、それが一瞬にして壊されるときも、ずっと楽しげに笑っていた。
何故?
その答えを自分の中に見出したとき、僕の足は自然とある場所へと向かっていた。
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