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「……自分の身も守れない者が、そんなところに一人でいるものじゃない」
僕が少女の姿を見つけたのは、ギルドから少し離れた、廃屋の外階段の下だった。
物思いに沈んでいた顔が、驚いたように僕を見上げる。
「あなたは……」
少女の声の響きから、僕は彼女のほうもまた、あの一瞬の邂逅で僕のことを覚えていたのだと確信した。
「……逃げてきたんだろ?」
僕の問いかけに、少女はピクリと体を震わせた。それは肯定を表していた。
「僕はロアーヌ。お前は?」
「……カーレン」
「僕と一緒に来るか?」
空色の瞳が、驚きと不安と戸惑いと……そして微かな期待に揺れて僕を見つめた。差し伸べた手に、おずおずと細い指が重ねられる。まだ小さな、柔らかい手だった。
「あたしを、自由にしてくれるの……?」
「少なくとも、夜に怯えなくてすむ程度には……な」
僕の言葉に、少女は一瞬顔をこわばらせ、それから僕の腕にぎゅっとしがみついてきた。
自由なんて、大それたものは与えてやれない。
それでも……僕はできるだけ、彼女の願いを叶えてやりたいと思った。
同じ闇を覗いてしまった者として、
彼女の心の痛みが、苦しいほどに分かってしまったから……。
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