それはなかった事にしてください

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 翌朝、私は決心を固くして登校した。  もうこうなったら桐野が迷惑がろうがどうしようが、私が全力で門倉から守るしかない。永遠に続くわけではない。卒業まで7か月ほどだ。  教室に入ると、桐野は窓際に立ってぼんやり外を眺めていた。さりげなく近寄って声をかける。 「登校時は大丈夫だった? 今日も協力するから」 「もういいんだ」 「よくないよ、学校の安寧のためでもある」 「門倉は今日、休んでる」 「ああ、そういう事か。良かった」つい本音が漏れた。 「よくない」  桐野は憂いた目をこちらに向けた。 「昨日、他校の生徒に絡まれて、一人で派手にやりあったらしい。謹慎にはなってないけど、結構殴られたみたいで……。今までは、そこまで荒れることなかったのに」 「でも喧嘩を買ったんだから自業自得じゃないかな。少しは反省すればいいと思うよ、門倉は」 「僕のせいだ」 「え、何言ってんの。関係ないよ」 「今までは均衡がとれてたんだ。僕が逃げ回るまでは」 「均衡って何よ。桐野がやられなきゃならない均衡ってなによ!」  つい声を張り上げてしまい視線が集まった。ごめん何でもないと、周りに笑ってごまかす。 「とにかく、今日はのんびり過ごして。明日からまた警戒しようね」  そのまま自分の席に着く。自分のせいでこうなったのはわかっているが、腹が立って仕方なかった。ヘタレにもほどがある。あれじゃまるでマゾヒストだ。桐野は門倉のサンドバックじゃないぞ。  イライラは午前中ずっと続いた。
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