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小学生みたいに棒切れを振り回す門倉のところまで全力疾走し、息がかかるほどの距離で、喘ぎながら叫んだ。
「ごめんなさい! 全部私のせいなの。桐野は被害者で……だから恨むなら私を恨んで」
「何だまたお前か」門倉が凄みのある三白眼で睨んできた。
「また私です。私が桐野を誤解してて、だから強くなって欲しくて……いや、その説明じゃなくて。その、桐野はずっと変わらず門倉と付き合っていたかったのに、私が呪いを……、あ、いや」
「何言ってんだお前」
「え、っと」
やばい、支離滅裂だ。秘密が多すぎて、門倉に伝えられることなど何一つない。
「喧嘩売ってんのか」
「とんでもないっ」
「桐野はお前に言い訳して来いって言ったのか。クソダサい奴だな。俺が怖くなったならなったで、そういえばいい」
「違うそうじゃない、桐野は」
「桐野はなんだよ」
桐野は――。
遠くから叫び声が聞こえたのはその時だった。
校舎の方から女子生徒が数人、必死の形相でグラウンドに走り出てきた。そのあとから、真っ黒い大型犬がよたよた付いてくる。
テレビで見たチャウチャウのような。いや、――違う。
「クマだ! 逃げろ!」
男性教師が叫ぶと、グラウンドに出てきていた30人ほどの生徒は半狂乱になった。
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