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「幸い2時間ほどで元に戻れることが分かった。それから門倉に接近するたび同じ現象が起きたけど、いつも進行状態は同じだった」
「そんなに何度も?」
そういえばここ最近、遅刻してきたり授業中いなかったりしたことがあった。
「これで4回目だから結構慣れてきた」
「いや、慣れないでしょ普通」
「あ……体がもとに戻りそう。ちょっと向こう向いてて」
私が慌てて背中を向けると、薄暗い部屋で一瞬発光があり、ゴソゴソと衣擦れの音がした。
「もう大丈夫だよ、お待たせ」
振り向くと、髪の毛をくしゃくしゃにした桐野がいた。ちゃんと制服姿だ。
「いったいどうしてこんなことに」
「それは僕が一番知りたい。何かの呪いにかかったか、僕の先祖にトラがいたか」
「そんなわけないでしょ」
「だよね。でも九条にバレて少し気が楽になった。とりあえず帰ろう。遅くなる」
私たちは学校を出たあと、原因をいろいろ探った。門倉にまつわる何かだろうという推測と、しばらく極力接触は避けるしかないよねというところまで話し、家の近所の三差路で別れた。
自宅に飛び込んだ私は、そのままずるずると玄関にへたり込んだ。変な汗がにじみ出る。
トラに変化する桐野が怖かったわけではない。
確信していたからだ。
桐野の変異は私のせいだと。
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