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翌日、私は桐野のボディーガードとして動いた。絶対に門倉との接触を阻止する決意でいた。
「九条……」
休み時間中ずっと前後の出入り口に張り付く私に、桐野が声をかけてくる。
「トイレに行く以外は外に出ないで。門倉が来たら私が食い止める」
「なんでそこまでしてくれるんだ」
「乗り掛かった舟、困ったときはお互い様ってやつだから気にしないで」
私のせいだとも、祠の妖狸に頼み込むまでの辛抱だから、とも絶対言えない。
「門倉が私たちと同じクラスでなくて不幸中の幸いだったよ」
「そう?」
「当り前じゃない。同じクラスだったら私ずっと桐野に張り付いてないといけない」
「九条は昔と変わらないな。いつだって頼もしい」と、のんびり笑う。
私は心の中で嘆息する。
誰のせいでこんなに心乱されてると思ってるんだ。
いつの間にか背もぐんと伸び、童顔の丸顔もすっかりシャープになった桐野。中身が頼りないままなのに、外身だけ成長するとかありえないから。
いろいろ計算外だ。まじで。
門倉が桐野に接触してきたのは音楽室への教室移動の時だった。中沢と森田を引き連れて、渡り廊下で待ち伏せしていた。
「あれ~桐ちゃんじゃん。最近もしかして俺から逃げてる? ダサい真似してないで俺と遊ぼうや」
間髪入れず私は走り出し、桐野の腕を掴んだ。「桐野大変! お父さんが倒れたって。すぐに連絡してあげて!」
思い付きの嘘を叫び、1階まで引っ張って行って事なきを得た。門倉と至近距離にならなければ大丈夫そうだ。
「瞬発力すごいな九条」尊敬のまなざしで桐野は私を見るが、そもそもあんたがもっと強ければこんなことにならなかったんだから、と少しだけ思った。
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