それはなかった事にしてください

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 放課後。私は部活に行こうとする桐野を引き留め、廊下の端に引っ張った。 「今日は部活休んでまっすぐ帰りなよ。また昨日みたいになったら大変だし」  桐野は柔らかく笑う。 「さっき門倉が校門を出ていくのを見かけたから大丈夫。昨日はたまたまトイレでバッタリ会っちゃっただけで。それより今日はいろいろごめん。気を使わせて」 「そんなのいいよ」私のせいだし。 「でももう大丈夫。自分の身は自分で守るよ。万が一門倉に接触しても、変化する前に急いで隠れればいいだけだし」 「なんでよ、私が防ぐって」 「いつまでも九条の世話になるわけにはいかないし」  私はいつまででも世話をする気でいる。使命感に燃えてさえいる。 「実はちょっと僕もつらい」 「私がかかわるのが?」 「逃げ回るのが」 「だってそれは」仕方ないよ。 「門倉にも悪いし」 「は? 門倉にそんなこと思うのはおかしいよ、元凶じゃん」 「僕の体の異変は門倉のせいじゃないし」 「そ、それはそうかもだけど」胃がちくりとした。 「とにかく、ありがとう。九条の気持ちは嬉しかった」  そういって桐野は頼りない笑顔を残して去って行った。 「どこまで気弱なんだ」  やり場のない苛立ちが体に充満していた。もう本当に、解放されたい。  とにかく今夜、祠に呪いを解除してもらいに行く。絶対に。  今は余計なイライラは募らせないでおこう。  私は部活を休んでまっすぐ帰宅した。  
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