じゃばらさん

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─── もうそろそろ焼けたんやない? (さっ)ちゃんも早よ食べまい、無くなってしまうよ? ───  煌々と燃え盛る炎に照らされ、闇の中に笑顔だけを浮かべた朋子(ともこ)おばさんが、焼き立ての『六分餅(ろくぶもち)』を勧めてくれる。  朝から子ども会の神輿があり、青年会は獅子舞を舞う。夜は夜で子供を集めたビンゴ大会の後、巫女が奉納舞を舞う。  その全てに、この村で生まれ、この村に育てて貰った私は関わっている。  当然の勤めだ。私も子供の頃はこうして、村の大人に楽しませて貰ってきた。今度は自分がそちら側に回っただけ。  村の伝統は村の者の手で守っていく。仮令(たとえ)、どれだけ外から人が移り住んで来ようとも、行事の主たる担い手は、我々村の者でないといけない。それが使命だと感じている。  昼に炊き出しのカレーをみんなと食べてから、ビールしか飲んでいなかった。  ビールはお腹が張るけれど、ほとんど水分と炭酸だから、当然少し経てばお腹が空く。 「もう、九時が来たねぇ。そりゃあ、お腹も空くわ」  勧められるが儘に、朋子おばさんの手から、六分餅を受け取る。  醤油が焦げた薫りと、餅が焼けた匂い。  香ばしさに空腹が刺激され、口の中が唾液で溢れる。危うく涎を零しそうになった。
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