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私は大学生になるのを機に、都会で華々しい女子大生ライフを送ろうと、大阪の大学に通う事に決め、意思に違わず四年間の大学生活を謳歌した。
四回生になった春、父が倒れたと聞き、慌てて帰郷し、そのまま父の葬儀に立ち会った。
主を失った醤油蔵をどうするのかで、親戚一同困惑したが、結局は女である私には無理であろうと、職人達の働き口を斡旋した後、廃業という選択に至った。
元より就職は地元でとは思っていたのだが、残された母が心配で、その思いはより強いものとなり、大阪での友人や恋人の事は全て断ち切って、卒業と同時に戻ってきた。
就職難の折りから、何とか知り合いの口利きで、地元の建設会社に事務員として働き口を得たのだが、それで満足の行く私ではなく、粘り強く試験を受け続け、帰郷三年にして漸く、地元の中学校の国語教員となった。
同僚であった農大出身で理科教諭の夫との仲が深まるにはそれ程の時間は掛からず、交際から二年で結婚。退職する事もなく今に至る。
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