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─── じゃばらさん ───
漢字を宛てると『邪払様』となる。
『邪』、災厄を払ってくれる、我が村の古くからの守り神。
毎年、秋になり稲刈りが終わると、豊作を感謝し、又、次の年の豊作を祈願して祭りを行う。
昔の様に専業の米農家は少なくなったが、それでも、田舎の家は今でも自分達で自分達の食い扶持くらいは作るものだ。
一家総出で田植えをし、また一家総出で収穫する。
みんな日常は自分の仕事があるから、大抵は日曜日に。それが終わればまた、それぞれが日常に戻っていく。
我が家でも、親戚一同で先日稲刈りをしたばかり。
その時には夫も張り切っていて、十歳も年下の母方の従兄弟である信二と仲良く協力してテキパキと慣れない野良仕事を熟していたのに。
今朝から夫の姿は見当たらない。
皆は大丈夫だという。じゃばらさんが護ってくれると。
誰が、何がどう大丈夫なのだろうか? じゃばらさんは何をどう護ってくれると言うのだろうか?
でも、私もまた、目の前の炎に幻惑され、現世の悩み事など何処へやら、空腹に任せて六分餅にむしゃぶりつく。
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