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「ホント、これ、美味しいですね!! 」
─── え? 何? 誰? 何を言ってるの? ───
「いやあ、夜な夜な、大きな焚き火を焚いて、人が集まってるから、何事かと思って来てみたら、こんな山奥の集落で、祭りですかぁ」
馴れ馴れしく、周りを見回しながら、誰に話すともなく、皆に聞こえるように態とらしい大きな声で話す。
さっきの人物。知っている顔。
─── 茨木 ───
そう、この顔は、少し歳は取ったし、髪型も変わっているけど、間違いない。
─── 茨木白虎だ ───
「あ、あんた、何やってんの? 」
「何って、六分餅のお相伴に預かってるところです」
減らず口は変わらないのか。
大学時代に同じ学部で学科違いのこの男は、私が大阪を離れる時に残してきた男の親友。
だけど、もう、私には関係のないこと。関係のない人。
こちらの線の中には入って来て欲しくない人。
喋るなよ。消えろよ。思い出すから。
だって、あの時、大阪に全てを置いてきたのだから。
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