偶然の再会

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偶然の再会

あれから、数ヶ月が経った頃。 俺は相変わらず、一夜限りの相手を探してあのクラブに通っていた。 だが、無意識に彼を探してしまう。 誰にも執着しない俺がどうしてしまったのだろう。 そんなある日、クラブの奥の部屋で、震えながら座り込んでいる男を見つけた。 よく見ると、可愛らしい顔をしている。 今夜の相手はこの男にしようと決めた俺は、彼に迫った。 「嫌だ、離せ!!」 「そういうプレイが好きなのか?」 「違う!!」 顔は可愛いが、なかなか強情だ。 だがそういう男も嫌いでは無い。 そう思った時だった。 「なぁ、嫌がってるだろ。」 「はぁ?お前に関係ないって…って、修二さん?」 「ん、久しぶり。」 待ちに待った人が俺の前に現れた。 俺は動揺を悟られまいと気丈に振舞った。 「優馬、その子、譲ってくれないか?」 「修二さんが俺と遊んでくれるならいいですよ。」 「気が向いたらな。」 「またそんな事言って。ほんとにずるい人だ。」 今夜、修二さんはこの男を抱くのだろう。 その事が堪らなく寂しかった。 こんな感情初めてだ。 だから、俺は彼の腕を引っ張り、舌を絡めながらキスをした。 「んっ…今夜はこれで我慢します。」 本当はもう一度、彼に抱かれたい。 でもそれを言う勇気が俺にはなかった。 「そういえば、入口の近くに優馬好みの子がいたぞ。」 「まじ?行ってみる。」 「ああ。いい夜を。」 「修二さんも。」 俺は笑顔で言うと、彼に背を向けた。 俺の目にはうっすらと涙が滲んでいた。 ずるい男に堕ちた俺はなんて愚かなのだろう。 俺はそのまま、店を出た。 今夜、彼に抱かれるあの男よ。 お前も彼に堕ちるだろう。 ざまぁみろ。
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