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一人より二人
二階の自分の部屋に行くと、ディも向かいの自室の前で立ち止まる。
「お休み。いい夢を」
「ありがと。お休み」
最初の数日こそ彼と同じ部屋で寝ていたが、ベッドを購入してくれた上に物置の一室を空けてくれた。掃除をしてくれたのだろう。すっきりと整えられている。
ありがたいよなぁ
明日頑張ろう
少しでも恩返ししたいし
「魔法書は、あったあった!」
軽くディと約束していたストレッチをしてから、木製のスツールに置いて分厚いある魔法書を手に取った。翼竜襲来以前の記憶が朧気ではあるが、確か家族の父か母が魔法使いだったと思う。
魔法使いといっても、自分の様な独学では流石に使える魔法は限られている。人の心を操ったり、混乱させるのは良心が咎めるのと怖さもあるので、専ら四大元素を使って小~中程度の攻撃する位だ。
イメトレしとこう
瞳を閉じて風や雲、水や光をイメージする。炎もイメージしようとするが、うまくいかず目を開いた。
「一一まだ怖い」
翼竜が吐き出した炎を思い出しそうになり、身震いする。眠らないととベッドに入るが目が冴えている。
あの炎があんなに村に降り注いだのに
俺はどうやって、、にげてきた、、、?
思い出せない
『エリク』
『お前はお父さんの子だ』
『エリク』
父親と母親が笑顔でいる幸せな夢なのに、顔立ちがぼんやりしている。
もっと顔が見えないとわからないよ
どうしていつもこうなんだろう
一一ク
「一一一一よう」
「おはよう、リク」
「ふぁあ、おはよう。ディ、早くない?」
「まぁね。今日は仕事は半日で切り上げるから、もう出るんだ」
「えっ!そうなのか?何にも用意してない」
「僕が朝は用意しておいたから、リクはまだゆっくりしてて」
「それだとナマケモノすぎない?」
「ふふ、午後活躍してもらうからいいんだ。充電してて」
「ごめん、何から何まで。昼は用意しとく」
「うん。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
手を振ると、振り返した。下まで見送ろうかと考えたが思い直し、窓から下を見下ろした。均整のとれた長身のディはとても目立つ。
「ディ!気を付けろよ」
「はーい」
見上げると手をゆるくふった。
一人じゃなくて良かった
ディは好きだ、だけど…
考えようによっては、彼ではなくとも誰でもよかったのかもしれなかった。一人になりたくなかったのだろう。
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