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再度店へ
マッサージの件があった日は流石に気まずかったが、次の日から何事も無かった様に振る舞えていた。
ディはからかわないからこういう時に助かる
「いただきます」
「いただきます」
サラダをつつきながらも考える。居候として家事以外には、先日のゴブリン討伐しか働いていない。これでは完全なお荷物だ。
これでいいのかな
そういえば…あの人
『あれ、エリクじゃないか?』
あの店にいけば会えるかもしれない
俺の過去を知ってそうだったし
「どうかした?パン、食べないの?」
「あ、いや」
見つめる瑠璃色の瞳と目が合う。
「今日、俺も行こうかな。城のある辺りにさ、肉食べようとした店あっただろ?」
「あぁ」
「あの店の人が、俺の顔見て話しかけてきたんだ。それで、知り合いだったのか聞いてみたくて」
「一一なるほど。それなら、そうだね。早い方が。でも一人で行ける?」
「行けるって。また子供扱いして」
「ふふ、リクはかわいいから、さらわれないか心配だよ」
頭を軽く撫でるので、ペット気分になりそうになる。
「かわいいって、、ふざけてんのか?そうゆう物好きはお前だけ」
「ううん、本当。ははは」
「またまた、よしっ、俺も準備しよう」
その後ディは翼竜に乗って山間部の配達へ向かい、こちらは街の中心部の飲食店へ出掛けた。翼竜とディの飛び去る姿は詩的で美しく、いつまでも見送っていたかったが、すぐに姿は見えなくなってしまった。おそらくスピードが早いのだろうと思われた。
街の中心部は今日も人で賑わっている。連れ立っている者も多く、ディが一人で大丈夫か、と聞いた事に納得する程おそろしげな集団もいる。
目を合わせないでいよう
とりあえず、あの店を
「あった」
覚えているか不明だったが、看板に特徴があったので思い出せた。深呼吸をして扉を開ける。
「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」
「あ、この前、会いましたよね?」
「え??初めてですよ。グレンといいます。以後お見知りおきを!さ、どーぞ」
「・・はい」
グレンと名乗った青年は、確かに以前あった彼だ。オレンジ色の短髪と箒眉毛に特徴があったので覚えていたのに、彼は自分を忘れてしまったというのだろうか?
「ご注文は?」
「えーと、コーヒーを」
「はーい。お客さん、顔色悪いですよ?大丈夫ですか?」
知り合いにあえた
過去がわかるかもって
思ったのにな
「大丈夫です」
「そうだ、良かったらクッキーどうぞ。店長の趣味ですけど」
「ありがとう」
「ごゆっくりお過ごしください」
グレンという彼は笑顔で去っていった。リップサービスだとしても、その心遣いが妙に心に沁みた。
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