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出会い
ある夜のこと。
カツアゲされている気の弱そうな男子高生と目が合ってしまい、放っておけずにガラの悪い連中を注意した。
そして案の定怒りを買い、路地裏のゴミだめに投げられる。これはもうボコボコの滅多打ちにされると思い、目をぎゅっと瞑る。
「つまんないことしてんなよ」
危機一髪のところで現れたのは、めちゃくちゃ美形の男。よく見ると、さっきの男子高生が後ろにいた。助けを呼んでくれたのかと分かったが、警察に通報してくれれば良かったのにと思ってしまった。連中は四、五人いるんだから、一人で来ても勝ち目なんてないだろう。
なんて思っていたら、美形の男はあっという間に連中を蹴散らして、呑気に欠伸をしていた。
「はい。助けたよ」
ありがとうございますと頭を下げる男子高生。
え、俺には……?と思ったが流石に言えない。
だって、連中よりこの美形男の方が怖い。
喧嘩慣れしているのか知らないけど強すぎて、冗談抜きで怪物に見えた。でも一応助けてもらったのに変わりないから、意を決して去って行こうとする所を呼び止めた。
「あ、あの!俺も助かったんで。ありがとうございました……あ、えっ手!切り傷!」
頭を上げた時に怪我している手が目に入って、つい声に出してしまった。
「あーほんとだ」
全く気にしていない様子だけど、今のでできた傷なら申し訳ないから、すぐさま絆創膏を鞄から取り出す。
「これ使って!」
しばらくの間、俺の顔を見てばっかりで受け取らないから半ば無理やり持たせ、再度御礼をしてからその場を後にした。
家に着くとゴミまみれの俺を見て、母さんが怒った。すぐに風呂に入らされて一息ついたところでさっきの変な奴だったなと思い返す。
でも目が綺麗だった。
うっかり見とれてしまいそうになって、咄嗟に絆創膏を押し付けたんだったと今更恥ずかしくなる。
もう会うこともないだろう。
と思っていた次の日。
「……え!あんた、昨日の?!」
学校内で制服を着ている昨日の男を見つけた。
背が高いし、雰囲気的になんとなく大学生くらいなのかと思っていたが、どうやら同じ学校だったらしい。
「……ゴミだらけの」
「それは忘れてくれ……こんな偶然もあるんだな!俺、河井誉。これも何かの縁だし、仲良くしような!」
こいつは俺の方を向いて、ふっと鼻で笑う。
なんて態度の悪い奴だと言葉を失うが、無視して教室に向かうとなぜかずっと一緒。
これは、まさか。
「あー同じクラス。仲良くしてくれんだっけ。よろしくね。河井……ほまれちゃん?」
二年に上がって迎えた新しいクラス。
後ろの席の神田って奴は、目の前で憎たらしい笑みを浮かべるこの男だった。
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