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「なんで女装して客呼びしなきゃいけないんだよ」
「その方が目立っていいだろってさ」
「俺の立場は?!変な奴だと思われるだろうが!」
くそ。やる気満々じゃねぇか。
しょぼいやつじゃなかったのかよ。
そもそもお化け屋敷なのになんで女装なんだ。
どう抵抗しても、当日になってしまったからにはやってもらうと言いきられてしまった。
わざと当日に言っただろうと涙目で悔しがっていると後ろに人がいたらしくぶつかってしまった。
「ほまれちゃん女装すんの?」
思いがけず出会ってしまって、心臓が跳ねる。
それを誤魔化すように、話し始める。
「準備来なかった奴とは話さない」
「あーバイト詰め込んでて、ごめんね。寂しかった?」
「そーゆー事じゃねぇわっ!」
「照れんなって。じゃ女装楽しみにしてる」
今からにやけ顔を浮かべる神田には絶対見せないと決めた。これでもかってくらいからかわれるに決まっている。
「は……?マジで河井……?」
「そうだっつってんじゃん。皆してなんだよもう」
「いやだって、完全女子じゃん。普通に可愛く見えてくるし、なんかいい匂いするし」
「化粧されたんだよ!匂いは知らねぇよ変態!近づくんじゃねぇ!」
神田だけ警戒している場合じゃない。
今日は男子も女子も皆敵だと再確認した。
ずっと教室にいても周りがうるさいし、言われていた通り、客呼びに行くことにした。
「二の四、お化け屋敷やってま〜」
「え、その声。ほまれくん?」
「……えっ叶さん?!来てたんですか?」
叶さんはワクワクしたような顔で俺を見ていたが、それどころでは無い。恥ずかしくていてもたってもいられず、とりあえず逃げた。
走り疲れた頃に、近くの空き教室に逃げ込む。床に座って、しばらく休憩する事にした。
溜息と同時に目を閉じると、ドアが開く音がして飛び起きる。
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