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真相
あの言葉を忘れられず、もやもやと胃もたれしたような気分になる。俺が男だからとかそういうどうにもできない理由かもしれないし、単に人として駄目なのかもしれない。後ろ向きな考えは好きじゃないのに、心が曇っていく。
……神田に会いたい。
「……浮かない顔」
とぼとぼと廊下を歩いていると、気づいたら目の前に神田がきていた。
なんてタイミングで現れやがる。
「俺だって悩みがあるんだよ」
「言いなよ、ほまれちゃんが言ったんじゃん。きつい時は言えって」
頬を掴まれ、見つめられるともう逃げられない。神田の手を取って、正直に話す。
「昨日、神田の元カノっぽい人に会って……俺といたら、神田は救われないって……話をされて」
「もう十分救われてるよ」
迷いの無い表情でそんなことを言うけど、俺は余計な事まで言ってしまう。
「そもそも俺は男だから恋人は無理とか……最近になって、手出してこないのも可愛げもない男だからとか思って……」
言ってから後悔し、申し訳なくなって手を離す。こんな言い方をしたら、神田を責めることになる。不安が暴走して、全部口に出てしまった。
しばらくして神田が口を開く。
「……救われないとか言うってことは元カノって名乗ったのは、中学の時付き合ってた人だと思う」
神田の口から直接付き合ってたと言われると心が痛くなった。
でも中学の時ってことは、神田の過去となにか関係があるのかもしれない。
「……処分受けた話。分かる?」
「聞いたよ」
「その時に別れた」
詮索してこなかった過去の話が、引き出される。
「……話したくないんじゃないのか」
「俺の問題に無関係のほまれちゃんを巻き込んだし、嫌な思いもさせたから話す。聞いたら俺のこと嫌いになるかもだけど」
「嫌いになんてならない」
「……ありがとう。これ以上、不安にさせたくないから。ちゃんと話すよ」
そう言うと、軽く微笑んでから話し始める。
聞く覚悟をすると、緊張からか鼓動が早くなった。
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