真相

1/4
前へ
/36ページ
次へ

真相

あの言葉を忘れられず、もやもやと胃もたれしたような気分になる。俺が男だからとかそういうどうにもできない理由かもしれないし、単に人として駄目なのかもしれない。後ろ向きな考えは好きじゃないのに、心が曇っていく。 ……神田に会いたい。 「……浮かない顔」 とぼとぼと廊下を歩いていると、気づいたら目の前に神田がきていた。 なんてタイミングで現れやがる。 「俺だって悩みがあるんだよ」 「言いなよ、ほまれちゃんが言ったんじゃん。きつい時は言えって」 頬を掴まれ、見つめられるともう逃げられない。神田の手を取って、正直に話す。 「昨日、神田の元カノっぽい人に会って……俺といたら、神田は救われないって……話をされて」 「もう十分救われてるよ」 迷いの無い表情でそんなことを言うけど、俺は余計な事まで言ってしまう。 「そもそも俺は男だから恋人は無理とか……最近になって、手出してこないのも可愛げもない男だからとか思って……」 言ってから後悔し、申し訳なくなって手を離す。こんな言い方をしたら、神田を責めることになる。不安が暴走して、全部口に出てしまった。 しばらくして神田が口を開く。 「……救われないとか言うってことは元カノって名乗ったのは、中学の時付き合ってた人だと思う」 神田の口から直接付き合ってたと言われると心が痛くなった。 でも中学の時ってことは、神田の過去となにか関係があるのかもしれない。 「……処分受けた話。分かる?」 「聞いたよ」 「その時に別れた」 詮索してこなかった過去の話が、引き出される。 「……話したくないんじゃないのか」 「俺の問題に無関係のほまれちゃんを巻き込んだし、嫌な思いもさせたから話す。聞いたら俺のこと嫌いになるかもだけど」 「嫌いになんてならない」 「……ありがとう。これ以上、不安にさせたくないから。ちゃんと話すよ」 そう言うと、軽く微笑んでから話し始める。 聞く覚悟をすると、緊張からか鼓動が早くなった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加