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嫌な予感がして反射的にそのドアを開けると、
涙目で押し倒されている茉夏と、嫌がらせをしていた男達と、ある馴染みのある顔が目に入った。
「……何してんだよ」
目を逸らしたくなった。
大事な人を酷い目にあわせたことと、
大事だと思っていた人が、いつからか俺のことが憎かったのかもしれないということから。
そんなやるせない気持ちを誤魔化すように何度も殴った。そんなことしても仕方ないのに。
不意に裏切られて、全部壊れてしまった。
涙を流して止めに入る茉夏の方を向いた時に、何かが頬を伝った。
「……あたしが。早く気がつかなかったのが悪いから……満。お願い、泣かないで」
なんで涙なんか出るんだと思った。
ただ憂さ晴らしに殴っていただけだった。
「守ることもできない彼氏なんて要らないだろ」
「なんで……?守ってほしいなんて思ってない。あたしが満に望むことなんて一緒にいてほしいってだけで……」
途中で何も言わずに逃げた。
裕斗が、なんであんなことをしたのか。
ずっと俺をどう思っていたのか。
知る勇気もなかった。
情けなく臆病になった俺は、
他人と一定の距離を保つようになった。
誰も信じたくないし、そもそも信じられなかった。
そして、ただそれだけ思っていたら、自分が本当はどうしたいのかもよく分からなくなった。
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