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話を聞き終えたが、どう声をかけるのが正解か分からず黙ってしまう。
「それからはどっちとも会ってないから。ほまれちゃんから聞いてびっくりした」
「……元カノさんとちゃんと話さなくていいのか」
「今更話したくないと思う。酷い別れ方したし」
話したくない人がただ見かけただけで、あんなに喧嘩腰に話しかけてくるとは思えなかった。
「せめて……彼女さんとだけでもちゃんと話せよ」
そう言うと、神田は黙り込む。
その沈黙から踏み込まれたくないことが伝わってくる。でもこのままじゃ何も変われない。
「神田には前を向いてほしい。過去に囚われてまた壁を作ってほしくない」
神田は少し暗い表情になる。
しかし追い打ちをかけるように言葉を繋ぐ。
「俺は何があっても、神田から離れないから」
そう言うとやっと目を合わせてくれた。
そして、俺の手を取って口を開いた
「会えるかは分かんないけど。連絡はしてみるから……待っててくれる?」
そう言われて急に、取られると言う考えが頭に浮かび、怖くなって引き止めたくなったが、その気持ちを抑えて頷きながら神田の手を強く握り返した。
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