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親愛
あんな酷い別れ方をした俺を忘れてなかったなんて思わなかった。結局俺より先に相手から連絡がきてしまった。正直今更何を言えばいいか検討もつかないけど、ほまれちゃんを傷つけることだけは避けたい。
久しぶりに会った元恋人は面影は残っているけど大人っぽくなって、少しだけ気まずい雰囲気で待っていた。
「久しぶり」
「あ。久しぶり!いきなり連絡してごめん。二年半ぶりくらい?元気だった?」
「うん……あのさ、いきなりで悪いけど最初に言っておきたい。今更になって申し訳ないけど、酷い別れ方してごめん」
「……満は悪くないよ」
あの時も今も俺は悪くないと言う。
一度でも俺を責めることはなかった。
その優しさもあの時の俺には重くて苦しかった。何か裏があるんじゃないかとかまた裏切られるとか考える自分も面倒で嫌だった。
「自分の都合で逃げるべきじゃなかった」
「でもまだやり直せると思うの。裏切らないし、信じてもらえるように頑張るし」
本気でそう言われて、平気でよりを戻せるほど他人に無関心じゃない。
「俺にそこまでする価値ない」
「ずっと忘れようと思ってたけど無理だった。
だって……やっぱ顔が超タイプなんだもん!!!」
そうだ。告白された時もこんな感じだった。
直球すぎて逆に面白くて付き合ったことを思い出し、気が緩む。
「絶対俺じゃなくていいだろ」
「そんなことない。でもグレちゃった満を改心させるってあの人何者なの?」
「何者……すぐ怒る。あとどんくさくて泣き虫」
「……そんなのがいいの?」
「でも馬鹿みたいにまっすぐで、他人のことばっか助けて。そーゆーの悪くないなって思う」
「ベタ惚れじゃん。あー男に負けちゃったなぁ」
「あれ。もっと粘ると思った。断るけど」
「顔見れば無理なことは嫌でも察せます」
「まぁ他に良い奴いるだろ」
「振った相手にそれ言う?」
最後に笑い会えたのは良かったけど、まだ一番大事なやらなきゃいけないことがある。
「あ。あと……俺の大事な恋人にまたちょっかいかけたら過去がどうであれ怒るから。よろしく」
過去の恋人からしたら最低な発言でも、ほまれちゃんから見たら良い彼氏でありたい。
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