休日

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休日のできごと。 「げっ……」 両耳にピアス、長身、そしてあの独特の脱力した雰囲気。間違いなく神田だ。 なんとなくで買い物になんて来るんじゃなかったと思い、バレないようにそっとその場から離れようとする。すると曲がり角から急に小さい子供が飛び出して来て、よろけてしまった。 その拍子に後ろにあった棚にぶつかり、物が落ちそうになる。その瞬間、目を瞑った。 しかしなんの衝撃もなく、不思議に思って目を開けると声が聞こえた。 「大丈夫すか?」 神田が落ちそうな物を押さえてくれていたのだ。こいつは、瞬間移動でも使えるのだろうか。 「あら。ほまれちゃんじゃん」 首を傾げながらそう言う神田にドキッとした。 多分、驚いたからだ。気づかれてしまったものの、助けてもらったから御礼は言っておこう。 「た、助かった……ありがとう」 「どーいたしまして」 「ちょっと満!どこほっつき歩いてんのよっ!」 突如現れたのは神田を下の名前で呼ぶ知らない女の人。知り合いなのか、もしくは彼女か。 そんな事を考えていると、女の人が俺の存在に気がつく。こっちを見る目力が強くて、驚いて体がビクッとしてしまった。 「あら。随分と可愛い男の子ね〜」 そう言った女の人が俺に手を伸ばすと、神田がその手を掴んだ。 「ちょっかい出すなよ。叶」 ……叶って名前だよな。 名前で呼び合うくらいに仲が良いのか。 俺に触らせたくないくらい大事な人なのか。 そう思うと、なぜか胸が苦しくなった。 「ねぇキミ!ちょっと一緒に回らない?後で好きな物奢ってあげるから!」 「え、えっ!ちょっと……まだ返事してないんですけど!?」 「カワイイ系の男の子のコーディネートしてみたかったのよ〜!」 「は。はぁ……」 俺の言葉は届いておらず、強引に引っ張られてしまった。これはどういう状況なんだ。どうして俺は、神田の彼女らしき人に連れ回されてるんだ。
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