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「えっと。それはどういう」
「中学の終わりくらいから信用できる人いなくなっちゃったのよ。憶測だけどね」
「憶測?」
「……うーん。誉くんには、話してもいいかな」
俺は唾を飲み込んで、話を聞いた。
叶さんが話してくれたのは、神田が中学の頃に学校で喧嘩騒動を起こし、謹慎処分になったことがきっかけであるということ。
その時の神田は怪我をしていなかったが、相手だけが怪我をしていた。その様子から一方的に殴ったということになり、神田だけが処分を受けたというものだった。
喧嘩だと言ってるのに一方的で完結するなんておかしくないかと思ったが、詳しいことはよく知らないから黙って聞いていた。
そして謹慎明けは、夜に外出をしてなかなか帰って来なかったり、学校もサボったりと明らかに変わってしまったらしい。喧嘩をした理由を聞いても何も言わないし、誰にも本音を話したくないし、信用もしていないように感じていたと言っていた。確かに神田は他人と話す時、変な間があったり、発言が軽かったり、壁作ってると言われたらそんな気もしてくる。
そんな過去があったと知ってしまうと、普段の掴みどころのない言動が切なく感じられる。
「でもさぁ。学校行かないくせに入試はちゃんと受けて、なのに高一はサボってばっかりで行動が全部矛盾してるのよ」
やっぱりサボっていたから今まで学校で見た事がなかったんだ。今考えると俺は神田の事を何も知らなかったんだなと気がつく。だからと言って、何があったかなんて怖くて聞けない。
「どうしたもんかって思ってたんだけど、最近になってちゃんと学校も行くようになって、なんか楽しそうだから嬉しかったの」
「え。でもあいつ、他人と壁作ってる感じして」
「あーやっぱり?それ無意識にやってるのよね。でも今日の満見てる限り、誉くんと話してる時はあんまりそう見えなかったけどね〜」
もしそれが本当だとしたら。
神田が心を開いてくれているなら。
ずっと出来なかったのに、俺の事を信用してくれてると思うと無性に嬉しくて目尻が熱くなる。
「……いつもほぼ無表情だし、本当分かりずらい奴。でも、信用されてるとしたら俺も嬉しいです」
照れくさい気持ちを抑えてそう言うと、叶さんは満足気に微笑んだ。
「これからも満をよろしくね」
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