✜23 婚約破棄!?

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 球の中の場面が変わった。右上に暦が表示されているが、1週間が経過している。おそらくイベントが1週間ごとに発生して、数々の選択した内容によって皇子との婚約が成立するかどうかが、決まるんだと思う。  悪役令嬢レイシアもミケル皇子に想いを抱いているが、皇子の方はというと、性格のきついレイシアが苦手らしく、敬遠しがち。主人公である自分達のマイキャラばかりに構うので、嫉妬の炎を燃やしに燃やして悪役令嬢ぶりを存分に発揮する。  度重なる嫌がらせ。主人公がボッチになるよう、まわりに無視するよう働きかけたり、陰で悪口を言ったりと、なかなか味な真似をしてくれるが、所詮ゲームの中での話。自分は耐性があるので、別に気にならないが、シュリは「はわわわわッ」とずっと悪役令嬢に振り回され、ヤコは「そこから出てこい! アタイがぶっ飛ばしてやる!?」とゲームの中の悪役令嬢にキレている。やっぱダメだな、このふたり……。  しかし、自分は違う。ジャンルは違えどゲームはゲーム。序盤でゲームの本質を見抜いて、群がる邪魔者を排除し、あざとく(したた)かな選択をしていく。欧米の強力な掃除機が如く皇子の心を吸引しまくること半年。皇子の好感度が早くもMAXに達し、婚約イベントが発生した。 「アラタ……ボクと結婚してくれ!」  自分の名前がそのままキャラ名なのはちょっとイヤだな。だが、ゲームもすでに最終局面まできている。不満はあるが、ゲーム進行を優先すべくコマンド画面を確認する。 【コマンド】───────────────  ➤「はい、喜んで!」   「すこし、考えさせてください」  ─────────────────────  なにこれ? 皇子攻略がこのゲームの目的なのに断る選択肢っている? もちろん「はい、喜んで!」を選択した。 「キミに話しておかないといけないことがある……」  なんだろう、まだ続きがあるのかな? 「実は我がユリウス家は代々、借金を多く抱えていてボクの代で全額返さないといけないんだ!」  ミケルの父王から数代に遡って途費がはげしく、財政難に陥っている現状をさらに赤字国債を発行しまくって今日(こんにち)まで凌いできたが、もう限界に近いそうだ。 「だから、キミも一生懸命、ボクの……いや、国のために働いてくれ!」 【コマンド】───────────────  ➤婚約破棄を言い渡す   「はい、喜んで!」  ─────────────────────  ふっ、このゲームを作ったヤツ(サクラ)、ひとが悪いな、あとで自分の気が済むまでアイアンクローをお見舞いしてやろう。  ゲームの中の話……だが、これは一択しかなかった。「やっぱりアナタとは結婚できない」と、婚約破棄を言い渡すと、謀反の罪で一生牢獄へ繋いでやると脅しをかけてきたので、次のコマンド選択で「知るかボケェェェ!」を選び、皇子に豪快なアッパーカットを喰らわせて、そのまま国外逃亡してバッドエンドで終わってしまった。 「どうじゃ? おもしろかったであろう」 「これ、サクラが作ったの」 「自慢ではないが、妾の傑作じゃ、どれ、感想を述べてみい?」 「知るかボケェェェ!」 「ちょっ、タンマじゃ、あいたたたたっ」  この実に素晴らしいクソゲーを作った頭のおかしいゲーム制作者にゲーム中と同じオチとして、アイアンクローを喰らわせてあげた。
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