[プロローグ]

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 始まりは、そう。  保育園の雲梯(うんてい)の下だったと思う。あの棒にぶら下がったら足が絶対に届かない遊具をよく覚えている。  私とあの子が仲良くなって一緒に遊ぶようになった頃。その日は私の髪型を真似たがるあの子の髪型を三つ編みにしてあげた。  私達はまだまだ非力で、雲梯の初めの棒から数本で手が痺れてしまって落ちてしまっていた。なんとか向こう岸まで辿り着きたくて、他に誰も遊んでいない青い色の雲梯で何度も挑戦していたね。 「やった、まんなか まで きたよ!」  私は数十回目の挑戦で少しコツを掴んできていた。じんじんする手を堪えながら後ろを振り返ると、あの子がキラキラした目でこちらを見ていた。 「わたし も がんばってみる!」  あの子が痛くなっていた手でもう一度棒にぶら下がろうとした瞬間ーー突然、男の子があの子を後ろから突き飛ばしたのだ。 「おい、ここは いまから オレ が あそぶんだ!」
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