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「う、うぅ、う」
顔から倒れ込んでおでこから血を流すあの子は涙でぐちゃぐちゃになっていて、私はあんまりのことに驚いて、駆け寄ることしかできなくて。
「なんで。なんで」
何にもできないで雲梯の下で二人でうずくまっていた。泣いているこの子が可哀想で、痛々しくて。それなのにあの男子に言い返したりこの子に何かしてあげたりできない私が情けなくて私も泣いたのだ。この子は特別で大切な子なのに、目の前で傷つけられたことに私も傷ついた。
その内に誰かが先生を呼んでくれて、頭から角を出した先生が偉そうなボス猿みたいなさっきの男子を叱ってくれた。
「どうしてこんな酷いことをしたの! 姫乃ちゃんに謝りなさい!」
「ご、ごめんなさい」
さっきまで威張り散らかしていた男子が萎れた朝顔のように縮こまっている。私ができなかったことを、やりたかったことを、先生は軽々とやってのけた。
私はこのとき悟ったのだ。
“強くならなければならない”
大切なモノを守るには強くならなければならないのだ。弱くて情けないままでは負けてばかりなのだと。
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