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I
「なんっっっっで!!!!!!」
私はバーでカルアミルクをあおった。
信じられない。
二人が付き合っていたことも話すような仲になっていることすら知らなかった。結婚するというのはもう、本当にあり得ない。
「まぁまぁ、岸さん。落ち着いて」
「これが落ち着いてられるわけがない!!」
私の隣に居る好青年は大学の同期、三隅洋輔だ。今は24歳の大手銀行員。仔犬系の顔をしているが、スマートに周囲の調整が出来る気が利く男である。その手腕から将来有望株に違いないと勝手に私は思っている。
一方で24歳の私は輸入雑貨を扱う会社の経理をしていた。仕事中は長めの髪を一纏めにしている私には何故かファンクラブが出来ているらしい。構わない。会社に勤めながら小物作家をしている姫乃がいつか独立した際に、私の得意な分野で力になるために得られるモノを全て得るために働いているだけだ。
「よくこれで本人達の前では平然としていましたね」
「姫乃の前で取り乱したりはしないから」
どんな状況でも、私は姫乃の騎士なのだ。
「どこで間違えたのかな......」
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