愚か者たち

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 俺は自分の頭が狂ったと思った。なぜなら ネットをしていたら、突然パソコンの画面が消えてそこから小人が出てきたからだ。昔の映画で女の霊がテレビから出てくるなんてのがあったが、とにかくそんな感じで小人が出てきたのだ。全長は5、6cm程度で子供の頃よく絵本や童話などで目にしたまさにあんな感じの小人だ。  そしてそいつが 「おい、お前。俺がわかるか?」  などと俺に向かって声まで発してくれば、『ああ、ついに頭がおかしくなってしまったな』と自分自身を疑ってしまうだろう。 「おい、呼んでるんだよさっきから」  小人は呆然と固まっている俺におかまいなく話しかけてくるが、俺はまったく身動きできなかった。 「まったく、人間ってのは毎回こうだ。身動きできなくなってこれは夢か幻かと考えるんだろ……」  小人は面倒臭そうにそう言うがなぜか顔は楽しそうに笑んでいる。そして次の瞬間、机の上で固まっていた俺の右腕に飛び乗り、 「ほらほら、これが夢か?」  と逆立ちをしてみせた。それでも俺が動かないと 「ほらほら、これが幻か?」  と今度はタップを踏んで踊り始めた。右腕がこそばゆくて反射的にその腕を引っ込めた。ようやく動くことができたのだ。  小人の方は「おっと」とよろめきながら机の上に飛び移った。 「おいおい、気をつけてくれよ。もし俺の身に何かあったら、お前は永遠にこの世界に取り残されるんだぞ」 『この世界?』どういう意味だ? と思ったがその時、周囲が真っ暗だということに気がついた。先ほどまで昼間だったはずだ。  部屋の明かりも付けていたがいまは暗闇に包まれている。しかしそれよりも不思議だったのは暗闇であるにも関わらず目が見えているということだ。いや、目で見ているという感じじゃない。なんというか”感じ取っている”とでも言えばいいのか? とにかく闇の中でもいつもの自分の部屋が視認できるのだ。上手く説明ができない不可解な感覚だった。 「なんだこりゃ……」  と俺はようやく声を出した。 「夢や幻じゃないぞ」  小人がニヤニヤしながら言った。 「いまお前がいるこちら側の世界はそのほとんどが。宇宙まで含めてほとんど無くなってしまった。この部屋も最低限しか存在してない」  どうやら説明をしてくれているようだがまともに耳に入って来ない。入って来るわけがない。それでもなんとか無理やり説明を耳と頭に入れてみたが、説明になってるとはまったく思えなかった。ただ、気になったことはあった。それは思わず声になった。 「”こちら側の世界”ってなんだ?」  それを聞いて小人はまたニタリと笑った。 「ようやく俺に気を回したか。そうだ、”こちら側の世界”だよ。わかるか? 俺はこちら側の世界とは全く別世界の異次元から来たんだ。こちら側の世界では俺たちは”小人”なんて呼ばれていて、ずい分メルヘンチックな扱いを受けているようだが、実際の俺たちはそんな可愛い存在じゃあない」  これもまたよくわからな説明だ。でもなんとか落ち着かなければならない。
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