おもちゃ箱

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 信一(しんいち)は5歳。幼稚園の年長組の男の子だ。信一はおもちゃが好きで、よく遊んでいる。だが、片づけるのが大嫌いで、何度も母に注意されていた。  信一は今日も注意されていた。 「信一、おもちゃを片付けなさい!」 「うーん・・・」  だが、信一は戸惑っている。本当は片づけをしたくない。面倒くさいからだ。 「ぐずぐず言ってないで片付けなさい!」 「はい・・・」  だが、母が怖い。信一は嫌がりながらも片付け始めた。その様子を、母は厳しい表情で見ている。信一は嫌そうな顔をしている。 「さぁ、早く!」  だが、片づけるのが遅い。明らかにやりたくないように見える。 「はぁ・・・」 「嫌なのはわかってるけど、恥ずかしいわよ」  だが、信一は片付けていく。散らかっていたおもちゃはおもちゃ箱に入れていく。 「わかってるって」  数分後、信一はおもちゃ箱におもちゃをしまった。 「はい、お疲れ様」  母は笑みを浮かべた。今さっきの怖い表情が嘘のようだ。 「うーん・・・」 「きっといい事あるわよ」 「ある?」  信一は疑問に思った。片付けて、何かいい事があるんだろうか? 「あるよ」 「そうかな?」  信一は時計を見た。そろそろ寝る時間だ。もう寝よう。 「おやすみ」 「おやすみ」  母は部屋を出ていった。信一はベッドに横になり、毛布を掛けた。 「はぁ・・・」  信一はため息をついた。おもちゃをおもちゃ箱に片づけて、何かいい事があるんだろうか?  寝静まった頃の事だ。信一は物音に気が付いて、目を覚ました。こんな夜遅くに、何だろう。お父さんかお母さんが騒いでいるのかな? 「ん?」  信一はある物に気が付いた。閉めたはずのおもちゃ箱が開いていて、光が出ている。何だろう。 「おもちゃ箱が開いてる。何だろう」  信一は興味にそそられ、箱に近づいた。だが、近づいたその時、おもちゃ箱に吸い込まれた。 「うわっ!」  信一は何が起きたのかわからず、目をつむってしまった。  信一が目を開けると、そこはまるで遊園地のような所だ。信一は呆然としている。今さっき、ベッドで寝ていて、おもちゃ箱に近づいたところまでは覚えている。一体、何が起こったんだろう。 「ここは?」 「遊園地だよ」  その後ろには、支配人らしき人形が動いている。まさか、人形が動いているとは。信一は辺りを見渡した。すると、おもちゃが動いている。まるで夢の世界のようだ。 「そ、そんな・・・。でも、どうして?」  信一は思った。どうしてここに吸い込まれたんだろう。 「きちんと片付けてくれたから招待しようと思ったんだ」  信一は驚いた。おもちゃをおもちゃ箱に片づけただけで、こんな事が起きるとは。 「そうなんだ」 「遊ぼうよ!」  信一は振り向いた。そこには人形がいる。いつも遊んでいる人形だ。まさか、一緒に遊べるとは。 「うん!」  信一は一緒に遊ぶ事にした。まるで夢のようだ。信一は嬉しくなった。  信一はたくさん遊んだ。おもちゃのSLに乗り、おもちゃのバスの上に乗り、走り回った。まるで夢のような時間だ。夜にこんな遊びができるなんて。おもちゃをおもちゃ箱に片づけてよかったな。 「楽しい?」 「楽しい!」  だが、徐々に朝日が射してきた。そろそろ部屋に帰らないと。 「そろそろ帰らなくっちゃ」  支配人は寂しそうだが、元の世界に帰らないといけない。 「今日はありがとう! そして、片づけてくれて、ありがとう」 「じゃあね」 「じゃあね」  すると、まぶしい光が起こった。それが収まると、そこはベッドの上だ。夢だったようだ。いい夢だったな。また見たいな。  と、そこに母がやって来た。 「おはよう」 「おはよう」  信一は嬉しそうな表情だ。何かあったんだろうか? 「あれ? どうしたの?」 「何でもないよ」  信一は何も言おうとしない。昨夜の夢の事は、誰にも言わないようにしよう。これからは、おもちゃは遊び終わったら、おもちゃ箱にしまう事にしよう。
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