初恋〜erste Liebe

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初恋〜erste Liebe

「英里、アメリカ転勤決まった。短くても3年は戻れない」 大学時代からの彼がどこか不機嫌そうに切り出した。 食事中、何度もため息をついて視線が合わなかった…今日って…別れ話なの? 「そう…おめでとう…だよね」 夜景が綺麗な雰囲気の良いバーでまさかの別れ話か… 恋に恋をしていた学生の私を思い出していた… ドイツで中学3年間を過ごした私は母の母校、私立一貫校の高等部入学式でPrinzに出会った。 日本人で…高校生で…この完成度…途端に興味が湧いた。 入学式が始まる少し前、講堂の保護者席でざわめきが起きた。 歴史ある私立校だから親や本人が有名人と言うのはよくある。 でもこのざわめきは違った。 この高等部で語り継がれる恋物語。 伝説のカップルと言われた本人が並び立った。 当時を知るOBの保護者がその姿を見てざわめいた…と式を終えた後、まさにその世代だった母から聞いた。 それが彼の両親… そっか、生まれながらのレジェンドなんだ。 彼は誰にもフランクに接してくれて、イケメンなうえに背も高く紳士。 カースト上位であろうに謙虚さも持ち合わせている。 モテる要素しかない彼にアンチは居ない。 彼に恋する女子ってどれくらいいるんだろう… 高等部2年のとき彼は一年間のアメリカ留学へ行ってしまった。 さすがに一年顔を見る事が出来ないのは寂しかった。 親友に「それって好きって事でしょ?告白したら?」背中を押されるけど好きだなんて恐れ多い。 彼はprinzだもの… そもそもそんなに話した事もないのに好きですなんて言われたら引くでしょ? ファンよ。彼は推し。身分違いなの。 御身を密かにありがたく拝見させて頂いてる私はモブ。 このスタンス気に入っているんだけど側から見ると焦ったいようです。 彼には同級生は言うに及ばず上級生、下級生あまたの女子が告白をした。 が、誰ひとりとしてJA(yes)を貰えていない。 …難攻不落。もしかしたら女子に興味ないのかも?… イケナイ妄想と戦いながら今日も陰からこっそり彼を見つめる。 あぁどうか彼にキモいと思われませんようにと祈る事も忘れない。
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