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彼が留学から戻り早々と大学の話題が会話の大半を占めるようになってきた。
学部が違えばキャンパスも変わるのよね…
内部進学試験はクリアしたものの彼はどの学部を選ぶんだろう…
彼も内部進学で同じ学部なら嬉しいなぁなんて思ってみたけど、まさかの理工学部。
私学で一番の偏差値ですよ?…あぁ私は逆立ちしてもリケジョにはなれない。
経済学部には彼のお祖父様が教授でいらした。
せめてもの接点と思っていたけれど、学費スポンサーの両親には逆らえず父の言う通り教育学部へ進んだ。
理工学部とは校舎も全く逆方向。
縁が無いってこーゆうコトなのね…
せめてサークル一緒ならなぁ…
先輩達から同サーで恋が生まれる話をいくつも聞いた。
確かprinzは高校の時テニス部だったよねえ?なぁんてあたりを付けテニスサークルに入った。
けど…当然そこに彼はいなかった。
美里には「全く知らない仲じゃないもの『どのサークル入るの?』くらい聞けたでしょ?」と呆れ顔で言われた。
モブの私が彼に話しかける勇気なんぞ持ち合わせておりません。
行動あるのみ!美里は簡単に言ってくれる。
それはそう…わかってる。
けどね彼の隣に並ぶだなんて畏れ多いし…彼の姿が見られないのは寂しいし…
あー乙女心はフクザツ。
優柔不断の私を嘲笑うように3年の春から理工学部は2駅向こうの新キャンパスに変わってしまう…
物理的に離れ離れ…
大学生活にも慣れた1年の後期。
学食でのんびりお昼を食べていると幸運にも彼が後ろの席でサークルの話をしてる。
ふんふん、なるほど…大学のHPでそのサークルを見つけた。
オートバイ…男の子らしい…
掛け持ち可で免許持ってなくでも大丈夫、か…でも両親はきっと顔を顰めるだろうな…どうしよう、どうしようと悩んだけれど勇気が出ず優柔不断の1年は瞬く間に過ぎた。
美里はアナ研なるサークルで2つ年上の彼氏が出来ていた。
「グズグズしてると彼取られちゃうよ?」
彼氏持ちの余裕かな。わかっているよ。
この気持ち、好き…なのかな。憧れ…かな?
小さい頃から父に「大学を出たらお父さんが決めた人と結婚するんだ」と洗脳されていた。
誰かを好きになるなんてイケナイ事だと思っていた。
それにこれが本当に恋だったとして、ダメだったときに立ち直れる自信がない。
告白して近くで見つめる事が出来なくなるよりモブでも近くに居られる方を選んだ。
あの時までは。
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