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そ、そうだけど…と、もじっと花音は視線を落とした。
私の肩から愁の手も離れてやれやれと思ったら「バカ」と。伊澄に強めの一撃を放たれた。
「アホ、バカ」
「……酷くない?」
「ハルなんか好きにすれば良いと思う」
「……」
ふんっと顔を背けて身体を翻し、伊澄は榊さんが居るであろうテントの方に戻って行く。「流石にハルちんが悪い」って蓮にも言われて、私も悪気がない訳じゃ無いからぐっと息を殺した。
「夏休み、やたら俺等のこと避けてんのと関係あんの?」
「…そんな事してません」
「あっそ。じゃあ俺等行くから、またね」
愁も身体を翻して行ってしまった。
千冬と花音だけ数秒此処に止まって、走ってきた花音にぎゅっと抱き締められる。それから花音が持っていた私のTシャツを受け取って、変わりに蓮のTシャツを花音に渡した。
「じゃあまたねっ、ハルちゃん」
「うん、また」
花音もたたた…と走って行く。
何故か残ってる千冬は花音が走って行ったのを確認すると、ゆっくり、確実に砂を踏んで私の元に向かってきて。
一日海に居たのに全く日に焼けることなく、髪を濡らすこともなく、汚れたといえば砂でサンダルが汚れたくらいで。朝から何も変わらない風貌の千冬は頭二個分くらい高い位置から私を見下ろすと、何故か肩に右腕を回して抱き締めた。
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