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騒がしかった教室、というか廊下も含めた一帯がいきなり静かになる。
騒いでいた私たちも何だろうって顔を上げて廊下がある方を見たら、そこに現れた人間がいつも通り機嫌が悪そうな顔をしてズボンのポケットに両手を突っ込み、扉の縁に右半身を凭れさせていた。
横から分けた前髪は長く、目尻下まで垂れた漆黒の黒髪
耳輪より短いサイドヘアの下でさっぱりとした襟足が覗いていて、冷たい眼光が睨むようにこっちを見据えている。
「……」
ように、というか、睨んでる。
目を細めてジッとこっちを見た千冬は一旦空気を飲むと顎を上げて、今度は民衆を見下すような態度でズカズカと教室に入ってきた。
独裁者って感じの、圧倒的な態度だ。凄く悪い雰囲気しか纏っていないのに、私の周りを囲っていた女の子達が数歩後ろに踵を滑らせて「……カッコいい」って意味不明な心境に陥っている。
カタッ
目の前に、独裁者が来た。
誰に用があるって言ってないけど、間違いなく私だと思う。
と思ったら急に肩を掴まれてグルンと身体が反転した。私の肩から胸に腕が回り、背後から右肩に千冬の顎がどすんと乗せられる。
「なっ、」
「コイツ借りてい?」
「……っ、ぁ、の…」
「ハルヒ持ってって良いか聞いてんの。用事あんだけど」
「っっっ、ど、うぞ、どうぞっ!!!じゃあハル君、またねっ」
「また、……あれだねっ。夏休み明けだねっ!!」
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