1.気持ちの整理

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そんなくだらない内容の仕草なのに周りの子達はキャーーーと黄色い声を上げて、気付いたら廊下まで沢山のギャラリーが湧いていた。 男に男が抱きついてる状況で普通だったら気持ち悪い筈なのに、誰も何も言わない。「……お前ホント凄ぇな」ってクラス男子が呟く声色には、もう慣れてしまったって色合いが含まれている。 それも分かる。 別にこれは今に始まった事じゃないから。 最近の千冬は暇さえあれば、私の教室に来るようになった。良く来るのは愁、蓮、花音で、伊澄と千冬は今まで滅多に来なかった。省エネ活動をする二人だし、二酸化炭素を排出するエリアを狭める為に部屋から全く出なかったからだ。だから千冬ファンは、千冬の名前を出してもその姿を拝める機会は少なかった。 登下校すら滅多に人に見られないから、この学校には誰にも見られず5階に辿り着ける秘密の通路があるって意味不明な噂話が立つくらいに。 そんな千冬が最近しょっちゅう校内を歩き回ってるものだから、女の子達は常に心踊る感じで学校で過ごすようになった。スマホ片手に千冬を激写できないかと、校内を動き回るようになった。 それも1週間ほどで無くなったけど。 何故ならこの教室に居れば、一日一回は千冬激写タイムが訪れるからだ。 「早くしろよ。荷物そんなあんの?」 人の肩で怠そうに話す千冬の目は、相変わらず鋭いのに据わっていた。 口まで怠そうに動いて喋る。鼻は高いし唇は薄いけど幅は広くて、睫毛は長い。そんな綺麗な顔立ちに前髪がいい感じに掛かり、横顔は惜しげもなく晒されている。正直この男とはしょっちゅう一緒に居るけど、最近の色気ムンムン千冬にはまだ慣れない。
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