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教室を出て階段で5階に上がる私は、エレベーター前の分かれ道で千冬と別れた。
私の教室があるのは3階だし歩いたって2階分だけだから歩けば良いのに、それすら嫌らしい。なのに教室に来る。意味が分からない。
結局エレベーターは動くんだから私が乗ったって変わらない、って千冬が言う通りなんだけど、なんか嫌なんだよね。それに運動不足は身体に悪いし。と思ってタンと一段階段を上ったところで人影に気付いた。
3階から4階に続く階段途中の踊り場で、何故か愁が壁に凭れて立っている。
「やっぱ来た」
目が合った瞬間、そう得意気に笑われた。
「……待ち伏せですか?」
「どうせ千冬の事だからエレベーターで戻ってくると思ったし、どうせハルヒの事だから階段使うと思って待ち伏せてみた。逃げないとは思ったけど、今じゃ二人で話す機会も少ないし会えたら丁度良いじゃん?」
「二人で話すことありました?」
「うん。だって、」
ちょうど愁が居る踊り場に辿り着いた時だった。
肩に掛けていた鞄を掴まれて、「わっ、」愁の方に引っ張られる。
愁の身体に右半身を覆われて、影が出来た愁の顔が耳口に近付くと「最近、俺のこと避けてんでしょ?」、蜜が溢れ出るような甘い音色でそっと耳打ちされた。
「………まさか。どうして避ける必要があるんですか?」
「それが分かんないから聞いてんだけど。学校終わりから日が暮れるまでみっちりバイト入れて、朝は何かって用事つけて部屋来ないし、バイト代も受け取ってくんないし」
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